「人間の心の繋がり方を練習させてくれる」カモン カモン Socialjusticeさんの映画レビュー(感想・評価)
人間の心の繋がり方を練習させてくれる
人間の心の繋がり方を練習させてくれる傑作映画だ!ジョニー(ホアキン・フェニックス)がインタビューした子供は明らかに俗に優等生ぽい。自分の意見を持っていて社会の一員になっているかのようだ。これらのインタビュー(ドキュメンタリー)が ドラマに組み込まれている。それだけでなく、これらが密接につながっている。2度も映画で繰り返したインタビューの答えの例がいくつかあるが、そのひとつが、『会話をしている人たちはいるが誰もわかってくれない。誰もいないのと同じだ』と少年が言った言葉だが、多分、学校でも社会でも、人とは会話をするんだが、表面だけの会話で、深くなく、分かり合えず、自分をわかってくれないんだなあと感じる人がいると思うだろう。特にネットの時代に、会話の大切さを忘れてしまっていて、コロナ禍の終盤ごろ、人がより心の中を見せられなくなったことに気づくだろう。長いパンデミックをどう生きたかは人によって違うだろうが、私たちに人間関係の希薄さの修復の仕方を教えてくれている。この映画はこのインタビューのある少年の言葉の解決策を示している。それは、例えば、ジェシー(ウッディ・ノーマン)とジョニーが問題を抱えた時、ジョニーの母親ヴィブは解決法が書いてあるマニュアルをジョニーにスマホで伝授した。ジェシーは『ママはマニュアルを見なくてもできるよ』と。マニュアルだが、こういう会話の仕方を学ぶことで、お互いが分かり、だんだん近づいて繋がってくる。 これが、インタビューを受けた少年の問題点を解決策に導く過程のシーンの一つであると言える。私は、映画を観ながら、インタビューの答えになる過程をこのドラマからみい出していた。人と人がいいかにして信頼関係を築いていくか、その過程をここで教えてくれていると思う。
ジョニーの甥、ジェシーはインタビューを嫌がって、そんなことより他のことに興味がありそうだ。まず、なぜ結婚しないのとジョニーに聞く。ジョニー側からみると『なぜかなあ?』と考える機会を与えられたようだ。
ジェシーという9歳の『孤児ごっこ』をする少年だが、父親の不在、それが、社会生活のできない父親の精神に問題があることを感じ取っているからこそ『孤児ごっこ』を思いついたのではないかと思った。それに、母親も精神的に不安定な伴侶の面倒をみにオークランドへ行かなければならず、ジェシーは伯父、ジョニーのところへ。ここでも、『孤児ごっこ』を。おいてきぼりにされ、精神的に不安定になるのも無理はない。ここでも、孤独感、恐怖感が、『人はそばにいても、何もできない。誰もいないという感じと』いう、インタビューを受けた子どもの心と一致している。
二人は共同生活をすることにより、喧嘩をし、選択肢があるという過程を踏んでこなかったジェシーは初めて、ニューヨーク行きの選択肢を与えられる。でも二人の間は、インタビューで言われるように『怒鳴って喧嘩しあって、お互いに反対の意見は言って口論しやすいが、自分を説明することは簡単じゃない。』 それに、『インタビューには答えないよ』と言ってた、ジェシーが自己インタビューをするシーンが好きだ。 将来のこと考えたことあると自問して、計画しても起こらないよと答えている。そして、忘れちゃうよというジェジー言葉にジョニーは二人で過ごした時の思い出をテープにして送る。カモン・カモン。。。。の答えはジョニーとジェシーが握っていると思った。
映画作品の形式は『エコー・イン・ザ・キャニオン』(2018年製作の映画)のように、ドキュメンタリーや現在起きていることなどを織り交ぜて映画にしている。最近、こういうタイプの映画を観るが、時々、外国の映画だと、土地勘が頭の中で理解できないが、この作品はデトロイト、オークランド、ロサンジェルス、ニューヨークシティー、ニューオリンズなどと字幕がある。ジェシーに本を読んで聞かせるとき、書籍名と作家名が字幕にでる。ジョニーとヴィブの兄弟が認知症の母親を面倒見ている時のエッセイはMother: An Essay on Love and Cruelty by Jacqueliine Rose と出ている。エンドロールにクレジットを入れてもいいと思うが、作品の途中に入れていることで、わかりやすい。それに。『移民としての将来』、『森林の大切さ』ヴィブの『堕胎経験』を女性の権利として捉え、このような時事問題にも触れていいる。そして、これらのことを意識に入れている。
白黒映画だが、この場合、心の中やかなり長文の会話を描写するのに適切だと思った。なぜかというと、フォーカスを言葉におけるから。しかし、こういうタイプの日本映画をあまり見たことがない。日本映画は会話が短く、行間を読めとばかり、コンテクストで意味をわからそうとする。そういうのは個人的に苦手だ!! 言葉を使え!!
それに、問題意識の乏しい人がよく『普通』という言葉を自分の周りの基準に合わせて使ったりするが、この映画ではジェシーが『普通って何だ』と疑問をもっている。普通には暗黙の合意があるらしいが、私はそれを知らなく、普通って何?どんなこと?と質問するので嫌われるようだ。