「ちょっぴりムカついたり、愛おしかったり」カモン カモン なないろさんの映画レビュー(感想・評価)
ちょっぴりムカついたり、愛おしかったり
ずっと観たかったのに世間の大型連休に合わせての公開なのか、早々に今週で公開終了。GW明けたらゆっくり観ようと思ってたのに、もうレイトショーでしかやってなくてかなり迷ったけど、やっぱり観て良かった。
終始穏やかな流れでモノクロなので、人によっては退屈に感じてしまうのかも。
だけど、却ってモノクロにしていることで セリフのひとつひとつや その演技が引き立っている感じがしたし、この映画の空気感をより鮮明に映し出していたと思う。
とにかくジェシー役の子が凄すぎる!!
演技?お芝居?もう、そのまんまジェシーですか?って感じで。
時折、驚くような空想で大人を困らせた後に、なんとなくこちらの反応を窺うような鋭い目は狂気さえ感じさせる。
と、そう思うのは、ただただ澄んだ瞳にたじろぐ自分が「大人」になった証拠なのかも…
ジェシーはありのままでぶつかってくる。そしてそれを戸惑いながらも決して目を逸らさず受け止めようと努力するホアキン演じるジョニー。
おうむ返ししたりと悪ふざけをするジェシーに、見てるこっちが「あぁ、あるある…」なんてイライラしながらも、後からジェシーの母親である妹に電話をしながら、度々省みるジョニーの姿勢には自分も気付かされる事もいっぱいあった。
物語の合間に出てくる著書もとても興味深くて自分も読んでみたいと思ったし、子どもたちの大人や未来に対しての想いは、大人の方がずっと色々見て来てるのに、子どもたちの方がもっとずっと視野が広くて、現実を真っ向から受け止めていて、根本的な事から目を逸らさない。そこから紡ぎだされる素直な言葉には胸に迫るものがあった。
色々な事を半ば諦めて取捨選択して大人になった自分に何か出来るとは思わないけど、逃げないで向き合う事は、耳を傾ける事は出来る。未来なんて何が起こるか分からない。だからみんな先へ進むしかないんだ。
それにしても、このふたりの関係はどうしてこんなにも愛おしく感じてしまうのだろう。心に秘めた不安があるジェシーに、戸惑いながらも懸命に向き合っていくジョニー。そこには優しい空気が溢れていて、最後ジェシーと叫び合う姿には胸がいっぱいになった。
ジェシーはジョニーとの数日間を大人になるにつれ、いつか記憶としては忘れるだろうけど、心に残ることは間違いないだろうし、自分にとってもそういう存在の映画になった。