劇場公開日 2022年4月22日

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「音を記録することが野暮に思えた」カモン カモン @花/王様のねこさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0音を記録することが野暮に思えた

2022年4月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

寝られる

雰囲気も役者もいいのに、観終わった後に「結局、この話の主題はなんだったんだ?」と考えてしまう。

希望ある未来を語る子ども達を憂いたかったの?
人の声ばかり聞いていて、自分の本心を語らないジョニーが、自分の思いを受け止めて覚えていようと思えるようになったことを言いたかったの?

そもそも妹の息子が9歳って設定に疑問。
ホアキンの年齢を考えたら孫でしょう。
絵図らがお爺ちゃんと孫なのよ。
ジェネレーションギャップを描くなら、自分語りができる老人と無垢な子どもの組み合わせの方が相性良かったと思うけどな。

キャラクターの背景や関係性が分かりにくいせいで、主軸がぶれてしまった。

母親と兄妹の関係
妹夫婦の関係
妹夫婦と子どもの関係
叔父と甥っ子の関係
仕事と子育ての関係
子どもの未来への希望と現実社会の関係

一体、どの関係がメインテーマだったのかはっきりしない。
どれも中途半端な解決や解釈しかしないから、上部だけのペラッペラなまとめにしかならない。

甥っ子の面倒を数週間見たくらいで、子育てを疑似体験した気になっているのも違和感がある。
子どもの行動に対して結局は母親やサイトに解決策を尋ねている時点で、それは誰かの模倣であって自分が試行錯誤して人間関係を構築しようと努力した結果ではない。
衝動的で感情的な相手に理論で説き伏せようとするインテリ野郎にしか見えなくなってしまった。

子どもに対してインタビューして、子どもの声を聞いて理解したつもりになっているもの同様で、その声を聞いて集めて結局は何をするのかが分からない。
理想や思想を垂れ流しているだけで社会が変わるはずがない。行動が伴わないので展開がない。果たして声を録音するという行為を描く必要性があったのだろうか。

ジェシーが録音の機材を持ち歩いて音を拾っている場面もあるが、どうして音を拾うのが面白いと思ったのかという描写もない。自閉傾向があって、自分で聞きたい音を絞って聴くことのできる録音の機械が気に入ったのかもしれないし、単純にイヤホンから流れてくる音に集中して楽しんでいただけかもしれない。
かもしれない要素が多すぎて、正解が見つからない。
この描写はこれをいうための演出だと断定できる要素が少なすぎて、見ている観客側が勝手に補足説明を付け足したくなる。

情報が散漫していて、誰にも感情移入できず、言葉遊びを永遠と聞かされ続ける。

「君が忘れてしまっても、僕が何度でも思い出させてあげる」と表面上は聞こえはいいが、成長と共に薄れてしまう記憶よりも、一緒に過ごした時の楽しかった、自分と向き合おうとしてくれた叔父さんへの気持ちはジェシーの心の中に残っているのではないだろうか。
自分が受け取った愛情の記憶を「ほら、君はこんなことを言って、こんなことをしていたんだよ」と思い出させるために録音して送りつけるって最高に野暮だと思う。

逐一、相手の気持ちを汲み取ろう、相手の気持ちに寄り添っているように見せかけて、自己満足で相手に関わろうとする演出が鼻についた。
大人だって、痛い時は痛いし、傷つくときは傷つくし、言いたくないことの100個くらいは抱えて生きている。
自分で処理しきれない感情をうまくコントロールして、他人と上手く付き合っていく距離感を身につけていくのが大人になるということだと思う。
距離感が掴めていない子どもと対峙する映画だからこそ、子どもに見せる大人の面と子どもに本心を語る人間と対峙する時の面を区別して欲しかった。
これでは、子どもの行動や言動が手に追えなくなった大人が白旗あげて、告解でもするかの如く自分語りをしているだけで情けなくなってしまう。

他人の感情なんて、当事者にならない限り分からない。
どんな苦しい経験も他人にとっては「へぇ、大変だったね」と社交辞令で返事するくらいしか感情移入してもらえない。
ペラッペラなエピソードを重ね、一息ついて振り返った時に初めて、分厚い本のようになった自分の感情が鎮座している。
ただ、そこにあるだけで時間は刻々と先に進み続ける。先へ。先へ。

果たしてこの解釈であっているのだろうか。
間違っているのだろうか。
少なくとも、映画を観た感想や受け取り方は千差万別。良いも悪いもさまざまな意見で溢れている。
他者の意見をありのまま受け入れる寛容さが平和な日常を送る秘訣だと言っていたし。
思うことも受け取ることも自由であるからこそ、人と関わることを楽しめるのかもしれない。

@花/王様のねこ
@花/王様のねこさんのコメント
2022年4月26日

NOBUさん
A24作品が肌に合わないのかも知れません。

@花/王様のねこ
NOBUさんのコメント
2022年4月24日

今晩は。
 ”少なくとも、映画を観た感想や受け取り方は千差万別。良いも悪いもさまざまな意見で溢れている。
 他者の意見をありのまま受け入れる寛容さが平和な日常を送る秘訣。”
 仰る通りだと思います。この作品は私は心に響きましたが、エンドロール中に席を立つ人がチラホラいました。
 私は、”この映画、A24が関わっているからか、アーティスティックな一面があるので、評価が分かれるだろうな”とは思いました。が、レビューにはそんなことは書かず。
 では、又。これからも宜しくお願いいたします。

NOBU