「子どもに教えられる」カモン カモン おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
子どもに教えられる
今週末は特に観たい作品がなく、上映時間の都合がよかった本作を鑑賞。すごくおもしろかったわけではないですが、いろいろと考えさせられ、心に染みるような作品でした。
ストーリーは、妹から「夫の病気に寄り添うため、しばらく息子ジェシーを預かってほしい」と頼まれたジョニーが、甥のジェシーと共に生活する中で、徐々に心を通わせ、互いに少しずつ変化していくというもの。極めてシンプルなストーリーで、淡々と日常生活が描かれるだけなので、絵面的には退屈に映ります。
しかし、その中で交わされる二人の会話、紡がれる日常が、その関係に少しずつ変化をもたらします。こう書くと、二人が互いに心を開いて打ち解けていく様子が浮かぶと思いますが、そんな単純なものではありません。素直な時のジェシーはとても愛くるしいのですが、ひねくれたような態度、訳のわからない問いかけ等、彼の言動にはなかなか理解できないところも多く、一筋縄ではいきません。それでも、そんな彼にじっくりと向き合い、その声に本気で耳を傾けることで、ようやく彼の心の中がうっすらと見えてくるといった感じで、心の距離の縮まりが緩やかに描かれます。
他にも、ラジオジャーナリストのジョニーのインタビューに答えるという形で、多くの子どもたちが登場し、自分の考えをしっかりと述べます。シンプルなものもあれば、抽象的だったり、大人をドキッとさせたりと、多様なものが示されます。子どもの自由な発想から、かつては自分もこんな感じだったのか、いつから狭い考え方や枠組みや常識やしがらみにがんじがらめにされるようになったのかと、気づかされます。
よく、「子どもに教えられる」と言いいますが、本作はまさにそんな感じです。子どもたちの声に耳を傾け、汲み取る努力をした大人にしか感じ取ることができないものがあると思います。子育ての苦労を味わった人や、子どもと向き合う仕事に携わったことのある人なら、本作に共感できるところが多いのではないかと思います。そういう意味では、人を選ぶ作品かもしれません。
主演はホアキン・フェニックスで、「ジョーカー」の怪演とはうってかわって、強烈なインパクトをあえて残さないような演技が好印象です。そして、このアカデミー俳優を相手に勝るとも劣らぬ演技を見せるのが、子役のウッディ・ノーマン!天才です!今後の活躍が楽しみです。