劇場公開日 2022年3月19日

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「タイ・ラオスの森に暮らす少数民族を追うドキュメンタリー。」森のムラブリ インドシナ最後の狩猟民 caduceusさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5タイ・ラオスの森に暮らす少数民族を追うドキュメンタリー。

2022年4月10日
Androidアプリから投稿

タイ・ラオスに200人程度しか残っていないムラブリ族を追ったドキュメンタリー作品だが、そのムラブリ族をカメラでとらえたのは、世界で初めてということらしい。
ムラブリ族は100年前ぐらいの時期に分散し、少なくともA・B・Cという三つのグループに分かれ、言語もすでに、それぞれのグループで変化してしまっているようだ。
タイに定住するAグループが約150人、同じくタイに定住するBグループが約5人、ラオスの森の中を移動するCグループが約15人程度ということが確認されている。
ラオスの森の中を移動するムラブリ族は、きちんとした住居もなく、葉っぱでおおった粗末な寝床に住み、村に食べ物をもらいに行ったり、森で採った芋などの食料を物々交換しながら暮らしている。
熱帯地方なので、衣服も粗末なもので用は足りるし、食料も何とかなるということだろうが、森の中で野宿しているのと、何ら変わらない生活をしている。
部族としては、すでに崩壊していると思われ、タイに住むグループは他の部族の村に定住して生活しており、ラオスにいるグループは昔のように森の中を移動しながら生活しているが、村に行き、必要な物を調達するなど、単独では生活できなくなっている。
ムラブリ族の言葉を調査する日本人の研究者がいるということもユニークだが、その言語も通じるのは200人にも満たないことになる。
ポスターのフンドシのようなスタイルは、頼んで昔の再現をしてもらったもので、実際はTシャツなどを着て生活しており、部族としてのスタイルは、すでに失われている。
文字はなく、言語のみ。しかし、他の部族と暮らす者の中には、すでにムラブリ族の言葉を話せない者もおり、後の世ではムラブリ族の文化が消滅している可能性は否めない。
貴重な映像かもしれない。ぜひ劇場でご確認ください!

caduceus