「ラスト5分で踏み締める一歩がとても力強い」私はヴァレンティナ 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
ラスト5分で踏み締める一歩がとても力強い
世界中でLGBTQの権利保障をテーマにした映画が生まれる昨今。ブラジルから届いた本作は、一人の少女が家族と親友に支えられながら、いかにアイデンティティを確立していくのかを丁寧に描いた作品である。冒頭から何気ない描写を通じて、彼女の置かれた状況が提示されていく。すなわち、すでに親は子のジェンダーについて深く理解しており、彼女がありのままで生きられるよう最善を尽くしたいと願っている。それからブラジルではLGBTQの権利が保証されているという。ならば彼女は胸を張ってヴァレンティナという名前を主張して良いはず。しかし現実的には様々な経緯があって親子は小さな街へと移住せざるをえず、学校でも「権利は保障されています。でも反対する人たちがいるのを忘れないで」と釘を刺されたりも。何がこの状況に突破口を開くのか。小さな、しかしたくましい一歩が、ラスト5分で鮮明に刻まれていて、非常に引き込まれるものがあった。
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