「危うさを凌駕する希望」私はヴァレンティナ regencyさんの映画レビュー(感想・評価)
危うさを凌駕する希望
トランスジェンダーの少女ヴァレンティナが、シンプルな学校生活を送りたいという願望が実現する事の難しさ。LGBTQがテーマの映画は数限りなくあるが、本作ではヴァレンティナ役を本当のトランスジェンダーが演じ、監督もプロデューサーもLGBTQというのがポイント。また、ヴァレンティナに災いをもたらす男子高生役の俳優もトランスジェンダーで、元々は脚本執筆のリサーチャーとして参加していたというのも見逃せない。従って、俗に言うマイノリティに降りかかる社会問題にリアリティがある。
とにかくヴァレンティナに待ち受けるトラブルの連鎖がいたたまれない。ただ、失意の底にいた彼女を支えるのが同年代のゲイ男子やシングルマザーという同じマイノリティ、そして実の母親。特に母親の強い愛に救われる。
同性婚が認められているとはいえ、ブラジルのトランスジェンダーの中途退学率が82%。そして平均寿命が35歳という低さ。ラストに至るまでの展開も、問題が完全に解決しきれていない危うさを残しているのは、そうした現実を反映しているのかも。
それでも支えてくれる親や友人も少なくないからこそ、生きていく希望となる。
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