ケイコ 目を澄ませてのレビュー・感想・評価
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徹底された引き算の美学。 この映画には劇伴が一切ない。 氷を噛み砕...
徹底された引き算の美学。
この映画には劇伴が一切ない。
氷を噛み砕くガリッという音、日記を書きつける時の紙の上をガリガリ走らせるペンの音、静寂を切り裂くようにバシッ、バシッと鳴り響くミットを打つ音、シューズでキュッ、キュッと床を踏み鳴らす音。生活音だけが静かに流れ、
受け手の、画面を眼差す感覚が研ぎ澄まされていく。
ここに至るまでの過程や背景、主人公がボクシングに賭ける想いなど、一切の説明はない。聾者が主人公だが、共感を求めるように主体的に主人公の中に入ろうともしないし、送り手は一定の距離をずっと保ったまま、見つめ続ける。例えば、主人公が聾者の友人らと手話で会話するシーンには一切の字幕がない。主人公の葛藤の理由もはっきり分からずに話は進んでいく。理解や共感を求めるような作りには一切なっておらず、むしろ、そういうものからは距離を置こうとしているようにすら映る。
また、強いコンフリクトや、ハンデがもたらす感動とかで変に煽ることもしない。スポ根モノとしてドラマティックな盛り上がりがあるわけでもない。ただただ、静かに登場人物たちを照射する映画である。全ては受け手の想像に委ねられている。
劇中、大変なことや精神的にしんどいことが継続的に起こる。その後挽回するかのように何か特別に幸せが訪れるわけでもない。日常は淡々と流れて行く。けれどその日常の中にハッとする美しい瞬間がある。淡々と描く中に、計算された確かな眼差しがある。
街に静寂だけが流れ、最低限の環境音楽だけで静かに奏でられるエンディングは鳥肌モノ。永遠に見ていたい。
色んなものを削ぎ落としているけど、知的で静かなパワーがある映画。もう少ししたら2回目の鑑賞に行こうと思う。
メッチャ引き込まれる女性ボクサーの作品! 本年度ベスト!
岸井ゆきのさん目当て!
セリフは無いものの、彼女の演技に圧倒。
彼女が出演している作品の中でも1番良い作品って感じ。
聴覚障害のケイコ。
ホテルの客室清掃員として働きながら、プロの女子ボクサーとしてジムでトレーニングする毎日。
ケイコのトレーニングする姿が圧巻される!
特にコンビネーションのトレーニング。
グローブでパンチングミットを打つ音がリズミカル。
ストレートやアッパーパンチをする中、ミットを躱す動きもプロっぽい(笑)
ステップを踏むシーンがダンスをしている感じで美しいながらも何故かコミカルに見えてしまう。
試合のシーンの迫力が凄い!
本当にパンチを受けている感じ。
彼女が手話で会話するシーンも素晴らしかった。
ボクシングや手話など難しい演技が多い作品の印象。
岸井ゆきのさんにアッパレを差し上げたい(笑)
ジムの会長の笹木を演じた三浦友和さんも良かった。
最近観た水墨画の映画の役の様に優しい感じが印象的。
本作は実際にいる聴覚障害のある女性ボクサーを題材にしているらしいけど、音が聞こえないのにボクシングするって事に驚きを隠せず。
本作は岸井ゆきのさんの代表作になった感じです( ´∀`)
静かにアツい良い作品だった。登場人物全員の葛藤が丁寧に描かれつつ、...
静かにアツい良い作品だった。登場人物全員の葛藤が丁寧に描かれつつ、嘘のないほんの少し前を向くという終わり方が個人的には好きだった。字幕ありもよくて、途中の手話の部分は字幕無しというところも非常に良い。
ただ、本当に淡々と進むので、少し睡魔が来てしまったが、岸井ゆきのさんは止まらないなーと実感して。良い俳優さんを再認識した。
ボクシング映画は数々あれど、女性で聴覚障害のある方が主人公の映画は初めて?
小笠原恵子さんという方がモデルで出来たお話らしい。
彼女の経歴を事前に知ってから鑑賞すると各シーンが府に堕ちると思います。
岸井ゆきのさんのどこか尖った演技がザラついた16㎜フィルムの質感とマッチして良かったです。
澄んでいる
一つ一つの構図が美しく
雑多な日常の風景であるが非常に目を引く魅力的な画であって、とても好きです。
特に夜の川沿いの高架下で電車が通るとその光で浮かぶシルエットがとても良かった
しかし構図が決まった固定の画であるためボクシング試合のシーンでは少し大人しい
印象もあったが岸井ゆきのさんの闘う姿や生命力強い瞳から熱い闘争のようなものを感じた。
なぜケイコがボクシングを休もうと思ったのか理由を考える時間がとても長く
葛藤が非常に丁寧に描かれているが、結局決定的なものはわからず
こうなのかなぁ?と見る側がそれぞれ感じとるもので、少しモヤモヤしたが
それを察してか勝手に人の心をわかったように思わないでという言葉にハッとし
何事も明確にすることが良いということではないし
これは主人公も手探りであり、後半の松浦慎一郎さんが嬉しそうに笑った
コンビネーションミット打ちは
観るボクもとても嬉しい見事なミット打ちだった
とても静かな映画であり、激しいものは無いのだけど、静かな闘志というか
力強い生命力、深い呼吸のような強さが画から溢れている
淡々と進む
耳が聞こえないなりの苦労とかもあるんだろうけど、そういうことをクローズアップしなくても…と思ったのですが、原作があったのね…。
劇中、「がっかりだよ」というセリフがあったけど、その後何事もなかったように関係が進むのは、なんだかなぁ…と思いました。
この後、どうなるんだろう?
それを描かないと、この話は片手落ちのような気がする。そういう観客に丸投げ?にするパターンは、正直、好きじゃないなぁ…。
少し退屈なのに、心地良い
ある女性を定点観測の基準点として、日常を切り取った詩のようなドキュメンタリー、或いはドキュメンタリーのような詩。
生きるためには稼がなければならない。
生きるためのエネルギーとして打ち込める何かがあればもっといい。
生きるためには周囲とのコミュニケーションが必要だけれど、その方法は人それぞれでいい。
ささやかな達成感もささやかな挫折も車や電車の走行音と同じで、いつでも隣にあって、時には意識的に耳を(目を)澄ますこともあれば、無意識に受け止めていることもある。
ラスト。
対戦相手から声をかけられて、心にほんの少しの揺らぎが生じたと思ったら、想像以上に複雑な感情が同時に襲ってきて、思うより先に身体が反応して走り出す。
このシーンの岸井ゆきのさんの表情の変化は圧巻でした。映画全体のトーンは正直なところ少し退屈ではあるけれど、このラストを見たら、なんだかいい感じで締め括られてしまいました🤗
干渉はしないけれど、個々のあり方について自然体で受け入れる。
そんなウエット過ぎない人間関係の描かれ方がとても心地良い映画です。
ソリッドな岸井ゆきの
岸井ゆきのの視線も演技も切れ味が鋭い。耳が聞こえないというハンディをハンディとして扱って欲しくないという意思の表れだと思う。
ケイコの心の内の変化を表情と仕草だけで表現するソリッドな作品で、音のない世界を色々な手法で観客に伝えようとしている。高架下で電車の轟音が響く場所でも、ケイコは母親に何かを言おうとする。弱い者と見るや攻撃する中年オヤジの怒声もケイコには聞こえない。
ボクシングの試合は、リアルファイトに感じるすごい迫力。岸井ゆきのはハードなトレーニングをしたんじゃない。
作品の質は高いと理解できるが、ライドできるようなストーリーラインでないところが、自分の好みではなかった。
それにしても、客席が9割埋まっていたのには驚いた。
すっぴん?のゆきのちゃんは良かった。三浦友和はヤクザみたいで、倒錯...
すっぴん?のゆきのちゃんは良かった。三浦友和はヤクザみたいで、倒錯的な役は似合うけどイマイチ。話がよく見えず。昔の無声映画みたいな、黒画面の白抜き文字は新鮮だった。
耳が聞こえない世界の表現方法
昨晩、ドラマsilentを見始めましたが、今日は映画です。
岸井ゆきの(三浦透子)が好きな女優なので、ちょっと遠征です。耳が聞こえない役でセリフがありません。また、ボクサーということで、身体を絞りたくさん練習したのかな、と思います。とんでもなくブサイク(ブサカワ)な時と、とんでもなく美しいギャップが凄い。
主人公が耳が聞こえないので、独特な演出が多い。音楽がならないのもその1つです。また、服が摺れる音、鳥の音、水の大人など、効果音では無い自然の音が多いです。
3回ほど、電話がなるけど誰も出ないシーンがあって、なにか意味あるのかな、、、と最後まで気になってしまった。あれって聞こえたのは私だけ?もしかして他の観客の電話かな?まだ気になる。
演者は素晴らしいし、演出も独特で良いのだけど、ストーリーはイマイチかな。あれ?終わり?って思ってしまった。事実を元にしているので、少し感動もありますが。薄味と言えば薄味ですが、ちょっと味が欲しいかも。昨晩「silent」みたからか、、、?
説明せずともグッとくるカットが必ずある
「silent」に熱狂している層にも観てもらいたい一本。
主人公には聴こえない音が凄く効果的に使われている。縄跳びの音。サウンドバックの音。ギターの音。など挙げると限りないが、音を排しすぎることなく演出することの巧みさを感じた。
「休みたい」という会長への手紙を渡せないままジムの閉鎖が決まる流れ、説明し過ぎず主人公の心情は類推するしかないわけだけど、それに余りある岸井ゆきのの演技に脱帽。目を澄ませるとはこのことなのか…
主人公と会長が揃って鏡の前に立つシーン、主人公の妹の彼女のカルチャーに触れるシーン、そしてラストシーンの岸井ゆきのの表情。勝ち負けだけでは語れない人生がある。
目を澄ませる
16ミリフィルム、魅力的。
粒子感も、埃がまう様子も、フィルムにしか出せない雰囲気、そこから派生して生まれる空気感があってしみじみ感動。東京の景色との相性も良い。最近では、「フィルム」は時代遅れというよりも、“今っぽさ”を強調させる手法としてあるのかもしれないとも感じる。
聴覚障害のある女性の日常をリアルに描いた今作。
耳が聴こえない彼女だけの生活スタイルやリズムを丁寧に伝えている。
岸井ゆきのさんの演技も素晴らしく、「うん」「はい」台詞はこの二言くらいだったと思うが、その言葉にしっかりと重みをつけてくる。三浦友和さんとの回想シーンも印象的だった。
終始何が起きるわけでもなく、
でも世の中はしっかり変化していて、
気が付かぬ間に、ケイコ自身も変わっている。
その様子に、目を澄ませて、
彼女はこれからも生きていくのだろう。
ナイスステップ
先天的に耳の聞こえない実在の女子ボクサー小笠原恵子氏をモデルにしたドラマ。
2020年12月、デビュー戦を勝利した主人公が2戦目に向かい準備をしているところから始まって行き、コンビネーションのミット打ち良い音させてるね~と思ったら、8割ミットマンが…まぁ実際もこのぐらいの経歴だとそんなものか。
荒川拳闘会にやって来た経緯を説明しながら、ジム閉鎖への流れになって行くけれど、出し倦ねる手紙の真意は…。
女性ならではの思考なんだろうけれど、何だかイマイチ釈然としないのは、やっぱりハングリーさとかボクシングに懸ける思いみたいなものが伝わって来ないからですかね。
この時点でそれ程の思いがあった訳でもないのだろうけれど。
どちらかというと主人公よりも関わる人物を主に、丁寧に丁寧にみせている様な感じで、主人公がそれに呼応する様もあまり感じられずのっぺりしている印象。
最後は少し気概も見えたけれど、これと言って刺さるものはなかったかな。
作品とは関係ないけれど、隣席のお方がコメディ映画みたら笑い死ぬんじゃないかってぐらい、終始フガフガとわかってるふりの笑っているふりをしていて鬱陶しかった。
今週はアバターに押されるとは思うけどこちらもぜひ。
今年364本目(合計639本目/今月(2022年12月度)17本目)。
※ 以下で「健常者」という場合、「聴覚障害をお持ちの方」に対しての対義語として用いる(狭い意味)ものとします。
さて、こちらの作品です。
一応、原作小説を参考にしていますが、「一部において着想を得た部分はあるが、内容はフィクションです」とでます。そもそも時代が異なる(映画内ではコロナ事情の2020~2021年が描かれているが、原作小説および、想定される「実在の人物」の方の活動時期が違う)というように違う点はかなりあります。ただ、「大筋において」は同じなのでしょう。
内容に関しては他の方が書かれているので、ちょっと別の観点から書きます。
個人的には、この映画が良かったし多くの方に見ていただければ、と思うのですが、いくつか気になる点もあります。
ひとつは、この映画が「デフォルトで」バリアフリー上映でない点でしょう。映画の趣旨的にどうしても当事者がいかれることが想定できるのに、バリアフリー上映が朝の非常に行きにくい時間帯にしか設定されていないなどです(ただ、この点は映画館の裁量の話)。実際、趣旨内容的にバリアフリー上映であるべきものに関して字幕をつけたら誰かが文句を言うのか…というと、これだけ障がいをお持ちの方が社会に進出している今日ではちょっと考えづらく、また、それについて「字幕がいちいちうるさい」というのも何か違う気がします(映画の趣旨として、ということを特に重視した場合。本来的には「すべて」がバリアフリー上映であるべきでしょうが、今は過渡期)。こういった点(作品「そのもの」をデフォルトでバリアフリー上映にすべき)がちょっと気になったところです。
また、海外と日本で事情が異なるものとして、こうした映画(ほか、視覚障がい等)を扱う映画は、海外ではできるだけ当事者の俳優をあてるようになってきています。いわゆる「社会的なマイノリティの方が出るべき作品に出てこない」といった問題です。このことは直接的には当事者の雇用、あるいは、間接的には「当事者から語られる、「より正確な」文化の伝え方(ここでは、ろう文化)」という論点が存在します。結局、こうした問題は、「映画や演技を学ぶ場所で、当事者に情報に接する機会の保障がない」という現状の日本の過渡期の事情があり、今は過渡期なので仕方なし…とも思えますが、「今は」であって、さらに5年後10年後もこういう、「当事者不在」のままで作品がつくられること、それ自体に少し危機感を持つところです。
※ なお、これらのことは、この映画の出演者の方を否定するものではありません。
採点対象としては以下が気になったところです。
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(減点0.3/上記にのべた事情(デフォルトでバリアフリーでない等))
・ どうしてもこの点は気になります。バリアフリー上映にしたところで、結局元のフィルムに字幕版がつくだけで、そもそも「バリアフリー上映回」も存在する以上、映画館はどちらのフィルムも持っているはずです。にもかかわらず、1日5回の上映で1回しかないというのは、ちょっと均衡を欠くというところです(そもそも、デフォルトでバリアフリーにしていれば、この問題は起きないので、他事考慮ではなく映画そのものへの指摘)。
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(減点なし/参考/手話の表現の差について)
・ 途中で自己紹介の話が出ますが、「名前」を表す手話は関東と関西とで違います(実際はより大きく分かれますが…)。関東圏では、映画内でもあるように「印鑑を押す表現」であり、関西圏では「胸のところに指で○を作る表現」(要は、小学生の「名札」の位置に○を作る)です。
このように手話表現そのものにも「方言」はあります。
※ 日本では、手話は「言語」です(改正障害者基本法(平成23)/「全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段について…」)。
本当にしたいことがあるわけではない、しかし、、、。
2022年。三宅唱監督。生まれつき耳の聞こえない女性ボクサーの自伝を元にした映画。主人公ケイコは下町のボクシングジムに通うプロボクサー。耳は聞こえないが初戦を勝利している。ところが、心の底からボクシングをしたいわけでもないことに戸惑っているうちに、ジムの閉鎖が決まって、という話。
何がしたいのかわからないままやってみたらできてしまうことがあって、それを続けるべきかどうか悩む、という「有為の人物の自分探し」という映画ジャンルがある。一時期のマット・デイモンが体現していたもの。本作もその系譜につらなる素晴らしい作品。セピア色の懐かしい感じがよくでるフィルムも、練習中のボクシング独特のリズム感もすばらしい。
とくにすばらしいのは音響。「目を澄ませて」は観客への命令なのかと思うほど、音響を文字通り言葉でしっかり見る必要がある。映画の性質上、音響についての字幕があるが、これがともかく素晴らしい効果を発揮している。普通に映画を見ている限り、今聞いているのが「遠くの方工事をしている音が聞こえる」とか「子どもたちの声が小さく聞こえる」とは意識しないが、字幕として言語化されるのでそれがいやおうなく意識される。ボクシングの縄跳びや吐く息の音までそれと意識させられる。言語が意味を分節化していくものであることがいやというほど明らかにされる。それに対して、映像は複数の意味を同時にあいまいに共存させる。この映画は、聞き過ごしてしまう音を言語化して「目を澄ませて」見るようにと強いたうえで、同時に、言語化できない複数の意味を提示する映画なのだ。冒頭からのボクシングシーンでこのことは十分に堪能できる。
内容、雰囲気、質感がうまい具合に調和
主演と助演の方々、素晴らしいパフォーマンスでした。映像の質感も非常に良くて、音楽や音の使い方も絶妙で、全ての良さが見事に融合して、雰囲気ある良作だったなぁという印象です。
色んな要素を盛り込んだ内容で、一つ一つが特異だった気がしますが、妙にリアルで生々しさを醸し出していたので、個性的な作品ながらもなぜか身近に感じてしまうくらいに感情を揺さぶってきたので、相当じんわりと来ちゃいました。
思ったよりも物静かな映画でしたが、それはそうかと思わせる説得力もあり、期待を裏切られたようで実はそれこそが期待通りだったのかなーとか、とにもかくにも良き作品であることは間違いありません。
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