劇場公開日 2022年12月16日

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「ボディブローな環境音」ケイコ 目を澄ませて サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ボディブローな環境音

2022年12月30日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

幸せ

日本アカデミー賞、最優秀賞女優賞、おめでとう!
「ある男」だらけ、そして知名度の高い映画ばかり受賞していた本年度ですが、そんな中で映画ランキングに1度も載っていない本作が受賞。岸井ゆきの、本当に最高だった...泣けてくる。また見たくなったな。

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先日、「月の満ち欠け」のレビューにて、今年一番のドラマだと「silent」を紹介しましたが、訂正させてください。最終回、ハッキリ言えば最低最悪でした。脚本家は今までドラマやら映画を見た事がないのか?紬というキャラクターがつまらな過ぎないか?カスミソウをイルミネーションとか抜かしたこと言うなよ!ろう者バカにしてるだろ!とツッコミどころ満載。今まで追いかけてきた自分が馬鹿みたいに感じるほどムカムカしたのですが、本作はその感情を払拭してくれました。これこそが、ろう者の本当の気持ちのように思え、聴覚障害をハンディキャップだ、すごい大変だ、と言ってるように聞こえるあの作品に対し、本作は決して自分の抱える障がいをハンデだと思っておらず、その周りも真正面から向き合ってくれて、見ていてすごく気持ちよかったです。

耳が聞こえない主人公の作品だと、音がない状況を体験させるシーンがよくあるのだけど、本作はそうではなく、逆に環境音を大きくし強調させることで、主人公のケイコはこの音たちが聞こえていないんだと、観客に感じさせる方法を取っている。それがすごく斬新で、痛いほど感情移入出来てしまう。紙とペンの擦れる音、氷を噛み砕く音、扇風機の爽やかな音、彼女にはこれらの音が届いていない。そんなケイコを孤独だ、可哀想だ、という風に描いていないのも本作の魅力で、嫌な事だったり聞きたくないことが聞こえないから、意外と羨ましいと思ったりもする。ろう者だから辛いという感じでは全く無い。

音にすごくフューチャーされつつも、タイトル通り映像にも見入ってしまう。16mmフィルムの良さは劇場でしか味わうことが出来ず、土地や光なんかもまた1人の登場人物として存在感を放っている。もの寂しさを出しながらも、決して強くない主人公が生きるために必死に頑張る姿を捉えている、ある種のドキュメンタリーのような作品。洗練された映像と音の美しさが、ボディブローのように胸に響く。見た直後は、物足りなかったなという思いが強かったが、時間が経つにつれてこの作品の底知れぬ魅力に気づき始めた。そんな、味わい深い映画です。

フライヤーを見ると、ゴリゴリのボクシング映画(百円の恋、アンダードッグ)を想像してしまうが、全然そうでは無い。私としてはそういうのを期待していたので少し肩透かしですが、それ以上に主人公・ケイコと会長の人生がすごくよく描けている作品であるため、良さを実感するには時間がかかりますが、素晴らしい映画であることは間違いないです。岸井ゆきのファンは必見。ホント、今年は岸井ゆきのが大好きになる年でしたよ。最高の演技をありがとう。

ラストは直前に見た「そばかす」に通じるものがあって、最高に良かった。
silentで盛りあがっている人達に是非とも見て頂きたい。それも劇場で。最後の最後で良作揃い。何度も言うようですが、今年は本当に邦画が凄かった。ラスト1本、年納めに何か見て、それで2022年はおしまいかな。

サプライズ
カールⅢ世さんのコメント
2023年3月11日

ありがとうございます。日本アカデミー賞でゆきのちゃんが出てきて、雄叫びあげて、嗚咽してしまいました。うれしいです。今夜は乾杯🍷

カールⅢ世
カールⅢ世さんのコメント
2023年3月11日

コメ返ありがとうございました。今、録画した日本アカデミー賞みています。まだ、ゆきのちゃんは出てきていません。助演女優賞です。大手会社だけの馴れ合いショーに一人だけ無視できない存在のゆきのちゃんは本当に素晴らしいですよね。作品賞や監督賞にもノミネートされてないのにね。大泉洋が偉そうにしているのがムカつきます。

カールⅢ世
カールⅢ世さんのコメント
2023年3月11日

昨日でしたか。最優秀主演女優賞発表。実の娘のことのようにうれしいです。2回以上観たもんね。パンフも買ったし、ゆきのちゃんの本も買ったもんね。やがて海へと届くも良かった。大河への道、神は見返り、犬も食わねど、テレビドラマの恋せぬふたりもよかったし、大活躍でしたもんね。
ある男は一回観ただけ。流浪の月、ラーゲリ、月の満ち欠け、死刑に至る病は一度も観てません。

カールⅢ世
サプライズさんのコメント
2023年3月11日

ですね!

サプライズ
光陽さんのコメント
2023年3月11日

岸井ゆきのさん、納得の受賞でした!
おめでとうございます♪

光陽
サプライズさんのコメント
2023年2月12日

コメントありがとうございます!
演出、そして何よりも岸井ゆきのが凄いですよね、この映画。個人的にはどのろう者の映画よりも、力強くて、リアルで、健聴者である私たちにボディブローのように訴えかける、この作品が大好きです。
本当に、おっしゃる通りかと。演技ではなく、憑依でした。

サプライズ
iwaozさんのコメント
2023年2月12日

ようやく観れました。結果、非常に同感です!^ ^
本当に聾者の方にはなれないけど、
万分の1でも、本当はこんな感じなのかも、と感じさせて頂けました。
岸井ゆきのは命懸けというか
全身全霊で役に体当たりして、
ぶちのめされて、苦悩していたんだろうな〜って感じで凄かったですね。もはや演技ではなかったと思います。個人的には、あの時期、小河恵子が岸井ゆきのに憑依していたんだろうとしか思えませんでした。

iwaoz