劇場公開日 2022年12月16日

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「ケイコ、負けんなよ。」ケイコ 目を澄ませて せつこんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ケイコ、負けんなよ。

2022年12月29日
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鑑賞方法:映画館

両耳とも聞こえない聴覚障害を持ったプロボクサーの主人公ケイコが、所属するジムの閉鎖を知ったり、親に心配されたりして、自分の進退について迷う話。

前半、表情もあまり変わらず、人と関わることも極力描かれない主人公は呆気なく劇中1個目の試合にあっさり勝利。だからこの強さの理由は、無駄な雑音が入ってこないから普通の人より逆に集中して試合に挑めてるんじゃないかと思える。

最初から強調されるジムの色んな機械が動く音、ミットを殴る心地良い音は聞こえないし、カードを作ると得になることも知りえないけど、コーチが大声で怒鳴る声やめんどくさいおじさんが絡んでくる声も聞こえない。聞こえないことがかえってプラスになってるのかなと前半までは思える。

でも、1試合目が終わり傷だらけ、体調も崩してお母さんにもやや反対され、ケイコの心の中に雑音が入ってくる描写が増える。そこら辺を境に友達と笑いあったり、弟ともコミュニケーションが増え、前半関わらなかった大声で怒鳴るコーチとも練習するシーンが出てくる。

極めつけはケイコの日記が明かされるシーン。ケイコが変わったのではなくて、実は最初から色んな雑音を心に抱えてたことが分かる。このシーン、勝手にケイコを神格化ささて見てしまっていた自分に気づいて、グサッと刺さった。普通にくだらないことで笑ってたり、ダルいなと思ったり、自分の未熟さを痛感する普通の女の人だった。

ボクシングをする何か高尚な目的があった訳じゃなくて単純にジムの会長が良いおじさんで、しかもやっと自分を受け入れてくれた場所だったから続けてたんじゃないかなと思う。それが、ジムが閉鎖になると決まり、色んな気持ちを抱えたまま試合に挑んで、そこで足を踏まれたことを誰にも気づいて貰えない理不尽さに遭遇して、初めて「負けたくない!」ってなったんじゃないかなぁ。

それまで、傍から見ると歯がゆい部分もあったけど本人的には耳が聞こえなくても比較的不自由なく暮らしていたように見えて、だけど最後、足を踏んだことを謝りもされなくて「あぁ絶対負けてたまるか」ってなったように見えた。負けんなよケイコ。

せつこん