劇場公開日 2023年4月28日

「妹の死を無駄にしないおにいちゃん。」劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室 ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0妹の死を無駄にしないおにいちゃん。

2023年5月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

災害現場で活躍する、緊急医療チームのすごさにまず圧倒される。一刻を争う極限状況での的確な判断と速やかな処置の見事さにはリアリティがある。医療の専門家の全面的な支援があって可能になっているのだろう。医療エンターテインメントとしてよくできている。
医療現場は大きな見せ場ではあるが、この作品の面白さは医療をめぐるドラマの構図がしっかりしていることだ。正直な所、どれもありそうな話ばかりではあるが、分かりやすく作ってあるのでとても楽しませてくれる。MERをめぐっての東京都と厚労省の主導権争いは、政治家のやりそうなことだ。仕事最優先で、家庭を顧みない夫と家庭を大切にしてほしい妻との対立はどこにでもある。音羽医官と鴨居チーフドクターとの因縁も出来過ぎである。しかしながら、ドラマとしてとても計算されていて、飽きさせない。分かりやすい設定と展開を追及した脚本の手柄である。観客は「対立」を好むし、その「対立」が試練にあってより高い次元で「解決」することを望む。医療をめぐって危険を冒すべきかどうかが問題になったりしているが、喜多見達の「使命感」と「行動力」がまわりを感化し問題を解決したように見える。喜多見の医療に対する信念の基にあるのが、「妹を救えなかった悔い」という設定も泣かせる。医療エンターテインメントとしても人間ドラマとしても、とても情に訴える作品でした。

ガバチョ