リコリス・ピザのレビュー・感想・評価
全167件中、81~100件目を表示
多幸感と切なさと
過去の映画へのオマージュがちりばめられていて、映画の詳しい人は納得感の強い映画らしいのだが、私にはさっぱり分からず。それでも1970年初頭のLA(サンフェルナンド・バレー)の雰囲気に浸れた(行ったことはないけれど)。燦々と降り注ぐ太陽の下で、15歳のゲイリーと25歳のアラナが出会って、惹かれ合って、お互いを求めて文字通り疾走する。とにかく二人は走る。そのシーンを観ているだけで幸せな気分になる。映画っていいな、と思う。
しかし、幸福感だけではない。LAでの生活は楽しそうだけれど、当時はベトナム戦争の時代で、人々はやけっぱちになっているようにも見える。オイルショックもやって来る。何より、アラナとゲイリーの、お互いに好き合っているけれど、生き方や精神性においては決して交わることのないのは切ない。年齢差によるものだけではない。アラナは、女性でユダヤ教徒で色々がんじがらめな中にあって、何者かになろうともがいている。ゲイリーが時流に乗りつつチャレンジするのを見守って、楽しんでもいるけれど、次第に一緒にいることに疲れてしまう。
ハイライトは、アラナが、ガス欠となった大型トラックを、エンジンブレーキだけで曲がりくねった坂道を下るくシーン。その肝っ玉! 対するゲイリーはびびって何もできないのに、難局を逃れた途端、脳天気に下ネタをかましている。アラナは、朝焼けの中、疲れた顔でその様子を見やる。そして、何かを悟り、あきらめたことが伝わってくる。
ラストシーンはハッピーで、二人が疾走するのにわくわくするけれど、それまでのシーンを観ていれば、多幸感はそんなには続かないことも分かるので切ない。
「リコリス・ピザ」はアナログ・レコード(LP)のことで、サンフェルナンド・バレーには同名のレコード屋さんがあったとのこと。映画の雰囲気を思い出しながら、ハイムの音楽を聴く。ハイムはサンフェルナンド・バレーの出身だったのだ。親密な心持ちで曲が聴くことができて、はじめて良さが分かった。
王道の青春映画
『マグノリア』、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』などで知られる、ポール・トーマス・アンダーソン監督の最新作。
ぼくはこの監督の作品が苦手で、途中で寝てしまうか、最後まで観ても理解できないものが多かった。今回の『リコリス・ピザ』は予告を観る限り大丈夫そうだと判断したが、それは間違いではなかった。
15歳の高校生が10歳年上の女性に一目惚れし、それをなんのためらいもなく告ることから始まるストーリー。様々な紆余曲折を経て、2人はどこに辿り着くのか……。70年代を舞台にした、明るめの青春ラブストーリーで、とても楽しかった。
主役を演じたのは故フィリップ・シーモア・ホフマンの息子であるクーパー・ホフマン。今後の活躍が期待される。ショーン・ペンやブラッドリー・クーパーも登場し、実に楽しそうにとんでもない役を演じている。
15歳の少年と25の女性の淡い恋物語 なんだけど まず少年の商才が...
15歳の少年と25の女性の淡い恋物語
なんだけど
まず少年の商才が凄く子役を始め様々な商売に飛びつく
25歳だけど冴えない仕事をしていたアラナは
そんな彼の才能に魅了を感じ助手をつとめるが
恋としてはやはり年齢差がなかなか縮まない
アラナの激情型の性格と
ゲーリーの野生的な行動力で物語は進むけれども
恋にはなかなか進めないところがこの物語のポイント
スパイス的なハプニングが散りばめられて
本質がわからなくなりそうだけど。
アラナは決して美人ではないけど
PTAの撮影で特に登場するシーンは
淡い光と水色の上着とミニスカート
美しかったです。
面白かった
やたらと刹那的で自分勝手な2人だが、彼らの周りにいる揃いも揃ってクソな大人達より全然マシだし、やみくもな行動が素晴らしいと思った。2人の動きをハラハラしながら追っているうちに、大人側にいて疲弊し、ささくれた自分の気持ちが解きほぐされていく感じ。
物語の起伏を見るのではなく、生態観察のような感触を人工の極致で作りだしている映画と思う。
クレジットを見ると監督自身もカメラを廻しているようで、フイルム撮影へのフェティシズムをビンビン感じた。
また、子供達だけでビジネスを始めて奮闘する様子が何となく映画作りの過程とダブってみえた。
キャストは良いかも
監督、俳優陣、ノミネート、時代背景の下馬評?チラシなどを見る限りとても評価が高く、良さそうな感じを醸し出していましたが、そうでもない。同じ時代設定なら、タランティーノの方が笑えた。何が良い?と思うままの2時間ちょっと。キャスト陣すごいかも、この監督の作品に出たい俳優が多いのかな?時代背景は好きですね。
ガキじゃねぇか
容姿もイマイチ、中身もガキンチョの二人の話。
女に関しては25歳とは見えない幼さ。
でもタバコ吸ってるときだけは少し老けて見えたな、
考えてること、やってることはしょーもないんだけど、なぜかこの映し方、音楽、脚本と一緒だと憎めない。不思議と飲み込まれていく感じがした。
例えばあえて目の前で異性と話すとか、おっぱい見せるとか、車壊すとか、、、
そしてよく走る、、、
そのだささが、時代性もあってかどこか嫌じゃない青さを演出してるんだなーって。
最初の舞台が割とつぼ。
70年代前半の米国西海岸ハリウッドに近いとある町。 高校生のゲイリ...
70年代前半の米国西海岸ハリウッドに近いとある町。
高校生のゲイリー(クーパー・ホフマン)は子役として活躍する一方、なにか一山当てたいと考えている野心家の少年。
ある日、学校にやって来た写真助手のユダヤ娘アラナ(アラナ・ハイム)に一目ぼれ。
彼女はゲイリーよりも10歳も年上なので、まるで相手にしないのだが、あまりに積極的なアプローチに断り切れず、夜の食事を共にした。
その後、事情があってゲイリーのニューヨーク出張仕事に同行できない彼の母親に代わって、付添人として同行したアラナだったが、それが友だち以上恋人未満、主としてビジネスパートナーとしてのふたりの奇妙な関係のきっかけとなった・・・
といったところからはじまる物語で、とにかく前半が秀逸。
友だち以上恋人未満、主としてビジネスパートナーという奇妙な関係で進んでいく男女の関係がとにかく面白い。
ゲイリーにしてみれば、アラナは「憧れの年上のひと」なのだが、どうもゲイリーは気が多い。
すぐにほかの女性にも気を取られてしまう。
対するアラナ。
これまた気が多く、同行したニューヨーク出張仕事で、ゲイリーの共演者のユダヤ人青年に気を許し、祝祭の食事に招待するが、無神論者というユダヤ人青年はアラナの父親の逆鱗に触れてしまう。
これを皮切りに、生来の上昇志向も災いして、大物スターと危うい関係になりそうになったりと、とにかく不安定極まりない。
しかしまぁこの不安定さというのは、70年代前半の不安定さのようなものでもあり、ベトナム戦争は泥沼化しているし、ハリウッドはニューシネマの時代だし、最終的には中東戦争のあおりを食らってオイルショックまでやって来る。
不安定だが、不安で不安でどうしようもないという心情ではなく、ゲイリーは、ウォーターベッドでの盛衰の後、ピンボールマシーンで再びビッグビジネスを成功させそうだし、どうにかなるのではないかしらん、と少々能天気に生きていられた時代でもあったような気がします。
映画後半まで、ゲイリーとアラナのくっつきそうでくっつかないエピソードが繰り返されるので、少々失速気味。
ショーン・ペンやブラッドリー・クーパーらの有名俳優も登場するが、彼らが登場してからあまり面白くないというのが残念なところ。
最後は・・・
そりゃ、ゲイリーとアラナはうまくいきますよ。
なんてったって、70年代。
不安定で不安な気持ちになりがちだけれど、少々能天気に生きていられた時代なんですから。
ポール・トーマス・アンダーソン監督作品では『パンチドランク・ラブ』を思い出しました。
ウォーターベッド
日本だとありえない設定なのだが、やたら日本ネタが出てくるのはP・T・Aだから
テイストは「インヒアレント・ヴァイス」ぽく何度も観ると味わいが出る映画なのだろう
ショーン・ペンもぶっ飛んでいたが、ブラッドリー・クーパーが笑える
色々、背景も知るとなお楽しめる
ちょっと安心
評判高いが見たことないPTAの、アカデミー賞ノミネート作品、どれだけ面白かろうとレビューも見ずに鑑賞。ストーリー至上主義のおいらには全くはまりませんでした。皆さんのレビュー読んで、同じ意見が多くてちょっと安心。
そうは言っても、ラストで右から女が、左から男が走ってくるところで一時間くらい前の同ポジのカットが一瞬入ったりするとなぜか盛り上がるのは映画好きの性なのか。あとはショーン・ペンがバイクで走り出してバコッと落とされるとこは素直に面白かったなあ。
ヒロインは、普通の子が最後に可愛く見えてくるパターンかなぁと思ったら、意外に途中で可愛く思えてしまいました。姉妹や両親も同姓だったようなのでまさかのマイスモールランド式。
パッチワーク的に70’Sアメリカを振り返るにはいいかも
作品の中でいったい何年経過したのかが良くわからなくて、結果クーパー・ホフマンは役柄の中で何歳になったのでしょう?って位ツギハギに出来事が羅列されるのを見せられる感じです。
ニクソンショックあたりの年代なので70年代初頭でしょうか、この先アメリカが自信を失い車が小型化されてどんどんカッコ悪くなっていく頃、ファッション・文化・ジェンダーなど全てが迷走していることを主人公二人の行動やショーン・ペン、ブラッドリー・クーパーのキレっぷりからうかがい知ることができ、観ながら「ププッ」と吹くシーンが多く、個人的には歴史の振り返りのようで面白かった。
クーパー・ホフマンもお父さんの面影もありつつ、少年の移ろう表情も表現していて今後が楽しみだったのですが、主人公二人は好き好き感がないのに、何故ああも相手の行動にジェラシーを芽生えさせるのが謎でした。
ストーリー的にはなんだかなぁ?でしたがファッションや車が沢山見られてそこが救いの作品でした。
走るシーンに青春を感じるが、青春だけじゃない映画!
青春だけのほっこり映画かと思いきや、
いろんな社会情勢に絡んだ困難があって、
ブラッドリークーパーのシーンは
ホラー作品並みにヒヤヒヤしました笑
この作品は走るシーンが印象的で
警察に連行されてしまった彼を
走って追いかけて、見つけて、何してるの!こっちに来て!ってジェスチャーする彼女が愛しかった、、!
こんな自分の身の心配をしてくれるなんて、
ザ・運命の相手でしょう!
そんなことを経た上で、物事はうまくいかず、雑把に言うと、途中、年下彼氏は若い女と浮ついちゃったり、
年上彼女は年上の頼れるおじさんと浮ついちゃったり、笑
それもリアルだけどなあ。
最後に主人公たちはどうするのか?!ドキドキ
夜の道を駆け抜ける姿もグッドでした。
ピザ屋さんは関係ありません。
日本人女性に理解できるのかな?
と思った恋愛映画。
なんか、幼い男性感情にピタッと沿うような、でも、ラストは女性の恋愛ドラマの様だし。
短い時間の中で、兎に角おかしな大人に振り回される青年達が、真っ直ぐな勢いしかない青春期を生きる姿に、オッサンの私はキラキラとときめいてしまった。
全編にわたって、選曲が最高だ。
監督のセンスに賞賛します。色んな人物像をしっかりと偏見なく表現出来る方なんだな。
次々と作品が観たいな。
欲望丸出し
久しぶりに、早く終わってくれないかと思った映画でした。
監督の作品は初見です。
きっと他の作品を勧められても観ないだろうな、くらいには魅力を理解できませんでした。
良かったところ
・ワックス議員の恋人マシューが切なくて、とてもキュートだった
個人的に、恋愛は夢見がちなものが好きなので、彼のように切実で言葉の端々に愛おしさゆえの苦しさがでている感じを好ましく思ったのでしょう。
・画づくり
あの年代の美術全般、インテリアやファッションヘアメイクをすばらしい完成度で観れたのは眼福。あくまで、側の話で主演やヒロインは全く魅力的ではない。後述します。そして、場面の切り取り方は美しかった、、、。タイトルロゴから一貫して、おしゃれでした。後世にもファッションを参考にできる映画として語りつがれそうなレベルです。
・弟の存在感
主演の兄とは似ていない美貌。端役なのに、圧倒的な存在感で弟メインになりはしないか期待しました。オーラというか、気怠げさと幼さが独特で引き込まれました。
好みではなかったところ
・ゲイリーとアラナ
まっっっっっっっっったく、魅力を感じませんでした。ロマンチックかと思いきや下衆で移り気なゲイリー、ゲイリーと遜色ない移り気さと身勝手な奔放さで下品なアラナ。(付き合ってないとはいえ、とても自由です。でもこれって、文化の違いなんですかね?)
はっきり言ってなぜアラナに惹かれたのかがわからず、冒頭から置いてけぼりでした。年齢差は少しキーであろうポイントなんでしょうが、女性側の、若い子への負い目みたいなものがすごく醜悪な形で表現されていて、それも目を背けたくなるところでした。中盤、とても20代には見えないほど顔が疲れるのはどういう意図なんでしょう?
・エピソードの畳み掛け
ともかく色々なことが大小起こり続けるのですが、すべては無為です。伏線やらメタファーはありません。若い時バカやったよね、アハハ!的なエピソードの畳み掛けです。そして主演2人の欲望のままにストーリーは続きます。それを、若き日の追憶としてふふふ。と見るのがこの映画という波を乗りこなすのに適した態度なのかもしれません。しかし、わたしは飲み込まれて砂浜に何度も叩きつけられ沖にも行けず、鑑賞時間中打ちのめされました。ハァ。
しかし、鑑賞後思い返してみればそれなりに学びがありました。
もうPTA監督作品は観ないほうがいいこと。
そして、ひとは自分が相手に取った態度通りに扱われるのかもしれないということ。アラナのほうがわかりやすいですが、金や才能に靡けば若さに打ち負かされ、権力にしなだれかかれば力同様の勢いで良いように使われ振り払われ、最後は全く似た相手を求めあうこと。
人に対して、真摯でいようと身につまされました。
PTAからホフマンへの愛に満ち溢れた映画
映画リコリスピザを鑑賞。PTA監督は、長年形は変われど、人を愛する狂気と、可愛さ余って憎しみ100倍をテーマに、普遍なる愛を描いてきました。それは、性別、年齢、立場を超えて、誰かが誰かを思う強さと儚さ、素直になれない弱さと愛に満ち溢れています。
PTAの映画は、人生で素晴らしい出会いをする瞬間に煌めく光を素晴らしい音楽で彩り、愛嬌たっぷりに描きます。主人公演じたホフマンは、PTA監督が愛した俳優フィリップホフマンの息子。彼がいなくなった今でも、その名優のDNAこの世に存在している素晴らしさを感じさ、PTAのホフマンへの愛を感じます。
青春は、良い音楽と、良いスパイスと。
最初のシーンから最後まで、
とっても良い音楽と時間が流れていました。
若さゆえの焦ったさは青春そのもの。
駆け抜ける2人の表情が最高でした。
また、ショーン・ペンやブラッドリー・クーパーの登場が
微笑ましく、良いスパイスに。
映画館を出たら少し涼しい夏の夕方で、
爽やかな映画だったな、といい気分になれました。
自身が1970年代くらいのアメリカを生きていたら楽しいのかも。
自分が思う青春時代のキラキラとはちょっと違うし、なかなかクセスゴなひとたちが出てくるし、主人公の二人の気持ちもよくわかんないし、顔も好みじゃないし、ほぼポカーンたまにクスクスおもしろ、そして終盤ちょっと眠たくなった映画でした。
アカデミー賞たまに全然ピンと来ないやつあるけど、まさにそれ。アメリカ文化を生きた人なら楽しいのかしらと思います。昔のアメリカを覗き見できて、それはちょっと楽しかった!
全167件中、81~100件目を表示