「クール」リコリス・ピザ Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)
クール
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大人が作った社会の中で、ゲイリーは欲しい物なんてないけど、手に入れる方法だけはしっかり心得ている。いつだって自分か世界の中心だから。
年上のアラナは既に自分が世界の中心じゃないことを知っているから、少し諦めながら自分の居場所を探している。
そんなあの頃のちょっとさえない二人の物語を、PTAは最高にクールな手法で描いてくれた。
鑑賞者に対して、感情や共感、懐かしさを押し付けない。「一生懸命作った映画を見届けてくれませんか」と言わんばかりの謙虚さに監督の映画愛を感じた。
逮捕されたゲイリーを乗せたパトカーを全力疾走で追いかけるアラナ。
ホールデンのバイクから落っこちたアラナのもとに全力疾走で駆け寄るゲイリー。
いくら駆け引きしたって、いざとなったら相手のために走り出しちゃうのが恋だよね。
同性愛者がカミングアウトするには、まだまだ階段を登らなきゃならない時代。彼の家の前に聳え立つ階段の先が少し明るかったのが印象的。
そこでアラナは自分の中の愛を自覚する。
ラストの、二人が全力疾走で出会う場所は映画館のチケット売場。シネフィルらしい直球をバシンと受け取りました。
それから、ゲイリーが慣れない煙草をふかすシーンにグッときた。お父さん(フィリップシーモアホフマン)の、おっさんの色気のある所作が垣間見えた。
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