「本筋がなんなのかわからないのが青春映画としてとてもいい。」リコリス・ピザ 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
本筋がなんなのかわからないのが青春映画としてとてもいい。
もう本筋がなんなのかわからないし、あえて方向性を定めることもなく、それでもどこかに闇雲に走り出したいような衝動があって、それをカメラの横移動と物理的に走るという行為で表現されていて、年が離れているとはいえ若者2人を取り巻いている大人たちは誰もが胡散臭くていい加減で、どこかタガの緩んだ1970年代の空気をみごとにすくい取ったような映画だった。
ハイムのファンとしては、アレナ・ハイムが主演というだけでなく、バンドメンバーでもある2人の姉と、彼女たちの両親がそのままの役どころで出演していて、それだけでファン心をくすぐられてたまらないのだが、この映画の特徴として、ノンプロフェッショナルの役者たちの佇まいというのが大きく、メタなキャスティングもただのファンサービスではない(役者ではないディカプリオの父親も存在感が半端ない)。
そして面倒な脇役を演じているのが芸達者な本職のベテラン役者たちといういびつさはなんなのか。名優たちを配してみごとな演技を引き出してきたポール・トーマス・アンダーソンが試みた、いままでとは違うアプローチがどこに向かうのか。今後のキャリアの方向性への影響も気になっている。
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