「70年代前半の米国西海岸ハリウッドに近いとある町。 高校生のゲイリ...」リコリス・ピザ りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
70年代前半の米国西海岸ハリウッドに近いとある町。 高校生のゲイリ...
70年代前半の米国西海岸ハリウッドに近いとある町。
高校生のゲイリー(クーパー・ホフマン)は子役として活躍する一方、なにか一山当てたいと考えている野心家の少年。
ある日、学校にやって来た写真助手のユダヤ娘アラナ(アラナ・ハイム)に一目ぼれ。
彼女はゲイリーよりも10歳も年上なので、まるで相手にしないのだが、あまりに積極的なアプローチに断り切れず、夜の食事を共にした。
その後、事情があってゲイリーのニューヨーク出張仕事に同行できない彼の母親に代わって、付添人として同行したアラナだったが、それが友だち以上恋人未満、主としてビジネスパートナーとしてのふたりの奇妙な関係のきっかけとなった・・・
といったところからはじまる物語で、とにかく前半が秀逸。
友だち以上恋人未満、主としてビジネスパートナーという奇妙な関係で進んでいく男女の関係がとにかく面白い。
ゲイリーにしてみれば、アラナは「憧れの年上のひと」なのだが、どうもゲイリーは気が多い。
すぐにほかの女性にも気を取られてしまう。
対するアラナ。
これまた気が多く、同行したニューヨーク出張仕事で、ゲイリーの共演者のユダヤ人青年に気を許し、祝祭の食事に招待するが、無神論者というユダヤ人青年はアラナの父親の逆鱗に触れてしまう。
これを皮切りに、生来の上昇志向も災いして、大物スターと危うい関係になりそうになったりと、とにかく不安定極まりない。
しかしまぁこの不安定さというのは、70年代前半の不安定さのようなものでもあり、ベトナム戦争は泥沼化しているし、ハリウッドはニューシネマの時代だし、最終的には中東戦争のあおりを食らってオイルショックまでやって来る。
不安定だが、不安で不安でどうしようもないという心情ではなく、ゲイリーは、ウォーターベッドでの盛衰の後、ピンボールマシーンで再びビッグビジネスを成功させそうだし、どうにかなるのではないかしらん、と少々能天気に生きていられた時代でもあったような気がします。
映画後半まで、ゲイリーとアラナのくっつきそうでくっつかないエピソードが繰り返されるので、少々失速気味。
ショーン・ペンやブラッドリー・クーパーらの有名俳優も登場するが、彼らが登場してからあまり面白くないというのが残念なところ。
最後は・・・
そりゃ、ゲイリーとアラナはうまくいきますよ。
なんてったって、70年代。
不安定で不安な気持ちになりがちだけれど、少々能天気に生きていられた時代なんですから。
ポール・トーマス・アンダーソン監督作品では『パンチドランク・ラブ』を思い出しました。