「欲望丸出し」リコリス・ピザ 水曜日さんの映画レビュー(感想・評価)
欲望丸出し
久しぶりに、早く終わってくれないかと思った映画でした。
監督の作品は初見です。
きっと他の作品を勧められても観ないだろうな、くらいには魅力を理解できませんでした。
良かったところ
・ワックス議員の恋人マシューが切なくて、とてもキュートだった
個人的に、恋愛は夢見がちなものが好きなので、彼のように切実で言葉の端々に愛おしさゆえの苦しさがでている感じを好ましく思ったのでしょう。
・画づくり
あの年代の美術全般、インテリアやファッションヘアメイクをすばらしい完成度で観れたのは眼福。あくまで、側の話で主演やヒロインは全く魅力的ではない。後述します。そして、場面の切り取り方は美しかった、、、。タイトルロゴから一貫して、おしゃれでした。後世にもファッションを参考にできる映画として語りつがれそうなレベルです。
・弟の存在感
主演の兄とは似ていない美貌。端役なのに、圧倒的な存在感で弟メインになりはしないか期待しました。オーラというか、気怠げさと幼さが独特で引き込まれました。
好みではなかったところ
・ゲイリーとアラナ
まっっっっっっっっったく、魅力を感じませんでした。ロマンチックかと思いきや下衆で移り気なゲイリー、ゲイリーと遜色ない移り気さと身勝手な奔放さで下品なアラナ。(付き合ってないとはいえ、とても自由です。でもこれって、文化の違いなんですかね?)
はっきり言ってなぜアラナに惹かれたのかがわからず、冒頭から置いてけぼりでした。年齢差は少しキーであろうポイントなんでしょうが、女性側の、若い子への負い目みたいなものがすごく醜悪な形で表現されていて、それも目を背けたくなるところでした。中盤、とても20代には見えないほど顔が疲れるのはどういう意図なんでしょう?
・エピソードの畳み掛け
ともかく色々なことが大小起こり続けるのですが、すべては無為です。伏線やらメタファーはありません。若い時バカやったよね、アハハ!的なエピソードの畳み掛けです。そして主演2人の欲望のままにストーリーは続きます。それを、若き日の追憶としてふふふ。と見るのがこの映画という波を乗りこなすのに適した態度なのかもしれません。しかし、わたしは飲み込まれて砂浜に何度も叩きつけられ沖にも行けず、鑑賞時間中打ちのめされました。ハァ。
しかし、鑑賞後思い返してみればそれなりに学びがありました。
もうPTA監督作品は観ないほうがいいこと。
そして、ひとは自分が相手に取った態度通りに扱われるのかもしれないということ。アラナのほうがわかりやすいですが、金や才能に靡けば若さに打ち負かされ、権力にしなだれかかれば力同様の勢いで良いように使われ振り払われ、最後は全く似た相手を求めあうこと。
人に対して、真摯でいようと身につまされました。