「永遠に続くラブストーリー」リコリス・ピザ しろくまさんの映画レビュー(感想・評価)
永遠に続くラブストーリー
舞台は70年代、カリフォルニア。
ハイスクールの校内で生徒の個人撮影がおこなわれている。生徒のゲイリー(クーパー・ホフマン)はカメラスタジオのアシスタントとして来ていたアラナ(アラナ・ハイム)と出会い、一目惚れする。
本作は、そこから2人の行きつ戻りつの関係を描く。
アラナと出会ったゲイリーは、その日帰宅して弟に「結婚する女性と出会った」と話す。
ラスト、ゲイリーはアラナを「僕の妻」と呼ぶ。
つまり、変わっていないのだ。
だから、このラストシーンから、また同じストーリーが始まったとしても、たぶん成り立ってしまう。
そう、無限にループできるのだ。
そう考えると、この映画は永遠にずっと観ていられる気がしてくる。
とても映画らしい、いいシーンが連発。何より、鳴っている音楽が心地よい。
主人公2人は、近づくようで近づかない。でも、ときどき2人は疾走し、全力で近づく。
パトカーに連行されたゲイリーを追うアラナ。バイクから落ちたアラナに駆け寄るゲイリー。そしてラストではお互いはお互いを探して街を駆ける。
終始、緩いトーンで進む本作だが、時折出てくる全力疾走がアクセントになり、2人の想いの強さ、切実さを表現していて、ストーリーを推し進めているのだ。
途中で出てくる人たちが、またおかしい。ショーン・ペン演じる往年の映画スター、その友人にトム・ウェイツ。バーバラ・ストライサンドと付き合っているという大物プロデューサーにブラッドリー・クーパー。
豪華キャストが奇妙な人を演じるというのは、同じポール・トマス・アンダーソン(PTA)の「マグノリア」に似ている。
おかしな人たちによる、おかしなエピソードが本作を単純なラブストーリーにしていない。そのひねりがなかったら、ただのよくある恋愛映画にしかならないだろう。
映画が何度も描いてきたボーイ・ミーツ・ガールの物語を、PTAは彼らしくツイストして見せた。