「創造したかったのは「空気」のようなものだと思う。」リコリス・ピザ ONIさんの映画レビュー(感想・評価)
創造したかったのは「空気」のようなものだと思う。
やっぱり初日にわくわくして映画館に行ってしまう唯一無二の監督にして、完全なる同世代監督、ポールトーマスアンダーソン。音楽的、文学的嗜好が強いけど、同世代のくっだらない風俗・通俗のものを扱うほうがやっぱり面白い。
誰も選び得ない過去の配役像の残らない若い主演ふたりを使って自らの青春時代を描き出す、、つってもまあ金がかかってる。過去を描くったってこんな時代の空気感や黄昏時を狙って掴み取れるもんなんでしょうか。いわゆる「街角」の再現度は恐るべし。公開がひと段落したら「ワンスアポンアタイムインハリウッド」と並べて観たい。比べたらこちらがどんな時間帯や空気感を狙っているかがよくわかる。あと「あの頃ペニーレインと」も見たくなったな。
まあそんな技術力を駆使して描かれるたわいもない青春。と、言っても子役が年上の女を好きになって、で、ウォーターベッドを一緒に売る、ってのはやはりキャッチーではないし、土地柄の芸能人ネタも決して大きく振りかぶってない。ご近所のあやしい、チャーミングな人々、って感じのスパイスの中で展開される「くっつくまでの話」。やっぱり狙いは「あの時の空気」なんだと思う。そんなものを人工的に作り上げてしまった。〜からのエンドクレジットの美しさ、チャーミングさは見事。
感心・感動作ではないけど、圧倒的な技術力で底上げされたこの世界はとても凡庸とは言えない。
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