「彼らがみた、カネも心も失った国、ニッポン」牛久 h.h.atsuさんの映画レビュー(感想・評価)
彼らがみた、カネも心も失った国、ニッポン
これほど不愉快で怒りを感じさせられる作品はない。もちろん作品そのものにではなく、当局の姿勢に対してである。
日本は国際交流の場で外面だけよくみせているものの、内実は非人権的処置をとり続けている。これは当局だけに問題があるのではなく、私たちの心の奥底に沈む、外国人に対する無関心で不寛容かつ人種差別的な精神のあらわれだ。
実際、難民条約に批准しているにもかかわらず、アジアやアフリカ諸国の人々に対し難民をひとりたりとも受け入れない姿勢を貫いている。反面、日本人が引き受けない単純な重労働に対し「技能実習」という屁理屈をつけて自分たちに都合の良いように「消費」している。
入管施設は私たちの予想以上に過酷な環境の「牢獄」だ。彼らは何も罪を犯していないのに、長期収監と暴行という罰を受け続けている。
彼らが施設の中と外から垣間見たのは、他者を思いやる経済的余裕も精神的な寛容性も失った国、以前は先進国とよばれたニッポンの実情だった。
そして、スクリーンで告発されていたのは、無関心を装う私たち自身の姿勢だ。
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