「小林聡美主演作、監督は『学校の怪談』『愛を乞うひと』『しゃべれども...」ツユクサ りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
小林聡美主演作、監督は『学校の怪談』『愛を乞うひと』『しゃべれども...
小林聡美主演作、監督は『学校の怪談』『愛を乞うひと』『しゃべれども しゃべれども』などの平山秀幸。もうベテランの領域ですね。
ひとり息子を喪い、海辺の田舎町でひとり人暮らしをしている芙美(小林聡美)。
50歳目前。
地元のタオル製造工場に勤め、職場の仲間たちと「フツー」に過ごすのが日課。
ちょっと変わっているのは、親友が同僚(平岩紙)の10歳になる男児・航平(斎藤汰鷹)だったり、息子喪失後になった依存症を克服するための断酒会に通っていることぐらい。
が、ある日、とても珍しいことに遭遇。
帰宅途中の自動車に隕石が衝突したのだった・・・
といったところからはじまる物語で、その後、事態は急展開!とならない。
日常はそれほど変わらない。
芙美自身での展開といえば、都会から逃避してきて工事現場警備員をしている五十過ぎの吾郎(松重豊)と知り合ったぐらい。
とはいえ、この出会い、息子の遺影に「かあさん、すこし乙女しました」と言わしめるぐらいの大きな心境を変化をもたらしている。
芙美と吾郎の淡色の恋のまわりで描かれる日常描写も、ちいさなドラマはあるものの劇的でない。
継父(渋川清彦)に馴染めなかった航平が、少し継父に心を開くようになったり、同僚の中でオンナを出していた未亡人の妙子(江口のりこ)が坊主(桃月庵白酒)と不倫をしていたり、とか。
断酒会会長(瀧川鯉昇)が憂さ晴らしに泥酔したり、とか。
ドラマドラマしていない演出で、さらりと魅せるのは平山秀幸監督の演出手腕でしょうね。
また、安倍照雄の控えめな脚本(オリジナル)も良い味でしょう。
それ以上に、こんな淡色なちいさな物語を映画化した製作陣の手柄でしょうね。
小品佳作というに相応しい映画でした。