「ベタでも全然構わない」ガンパウダー・ミルクシェイク デブリさんの映画レビュー(感想・評価)
ベタでも全然構わない
最高に楽しい映画。のっけから音楽やスローモーションの使い方で、ベタにやるからよろしくな!って言われているようで、肩の力を抜いて楽しめる。実際に名作映画のパロディっぽいところも多々ありつつ、アクションは見たことがない動きや展開も発明されていて素敵。地味に気に入っているのが、急な銃声など音で観客をびっくりさせるシーンが一つもなかったこと。体にぴったり張りつく動きにくそうな革のスーツなんかを誰も着せられなかったことも。快適な見心地だった。
服装のことでいうと、ポスターとかで見るサムは虎が刺繍されたピンクのスカジャンみたいなのを着ているので、普段からあれが彼女の仕事着なんだと思っていたらそうじゃなかった。黒ずくめの服装からあれに着替えて、同時に男たちの会社(ファーム)の管理から放たれて自分の考えで行動していく。これまたベタだけど好きな見せ方。
図書館の設定も楽しい。ヴァージニア・ウルフとかの本のチョイスもいいし、武器を渡しているときにマデリンがアガサ・クリスティーの本をぽんと乗せて「これは読書用よ」って言うのもいい。マデリンとフローレンスは恋人同士なのかな。特にセリフで設定を紹介することなく、そう見せているのだと思った。それもまた好きなやり方だ。
最後、爽快に悪者たちを始末するために、どうしても味方に犠牲を出さないといけなくて、そういう物語の都合によってマデリンが死ぬことになるのは残念だった。でも、その描かれ方は美しかったし、仲間たちが彼女を弔うところの描写も心に残る。
これ、かなり時代が古っぽく描かれているので、今度は8歳9カ月だったあの子が20代になった頃の話をやってほしい。何作でも飽きずに楽しめそう。