「とてもスカッとした」ガンパウダー・ミルクシェイク 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
とてもスカッとした
アクションが完璧でないところが、逆にリアリティがあっていい。男たちは力任せだが、女たちはタイミングと切れ味で勝負する。タイミングがずれたら手痛い反撃を食らう。しかし打たれ強さでは負けていない。身体の柔らかさで打撃を弱めてもいるし、痛みを無視しなければ生き残れない経験も生きている。
出てくる武器のバリエーションが面白い。リボルバーに自動拳銃にアサルトライフルにガトリングガン、レミントンと思しきサプレッサ付きの狙撃銃、それにグレネードやスモークグレネードなど、兵士が手で扱う武器のオンパレードだ。
近接格闘では黒いトンファーバトンが登場する。ナイフ付きの自動拳銃は悪い冗談だが、トンファーは素手に比べて防御力も攻撃力も格段に優れている。トンファーのパンチが自分の眼窩にめり込むことを想像すると、げに恐ろしい。
判官贔屓というのは日本人だけではないのかもしれない。柔道の試合で小柄な人が大男を投げ飛ばしたり、女性が男を近接格闘でノシたりするのがとても痛快だ。アメリカ人もそうなのだろうか。本作品を不愉快に思う人は少ないと思う。
ミシェル・ヨーが健在なのは嬉しい限りだ。アクション映画ばかりが目立つが、映画「The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛」では政敵に苦しめられながらも怯まずに進み続けた強い女性を演じてみせている。
クロエ・コールマンという黒人の子役は初めて見た。視線が力強くて凄くいい。演じたエミリーは、あまり帰ってこない父親に期待しないで独りで生きてきたことを窺わせる。大した演技力である。これからも活躍が期待できそうだ。
ストーリーはサクサク進み、ところどころに見せ場がある。アクションの王道みたいな作品で、緩急の付け方も素晴らしい。とてもスカッとした。