「斬新なPVとファルセットの響きは時代を超越している」a-ha THE MOVIE 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
斬新なPVとファルセットの響きは時代を超越している
ヒット曲にはメロディ・プラス・アルファの要素が不可欠だ。ノルウェー出身の3Pシンセポップ・バンド"a-ha"の場合は、1985年のスマッシュヒット"テイク・オン・ミー"のPVが、鉛筆によるスケッチ風アニメと実写を組み合わせた斬新な映像によってファンの脳裏に刻まれたことがある。ロトスコープというこの手法が、ダブリン出身の映画&ミュージック・ビデオ監督として知られるスティーヴ・バロンによって3分少々のストーリーに投入され、小刻みに動くスケッチとシンセサウンドの融合は今見ても全然古臭くない。むしろ、新しく感じるほどだ。
それは、"a-ha"というバンドにも言えることで、1982年に結成され、"テイク・オン・ミー"の後、紆余曲折を経つつ、60歳を迎えた今でも、独特の透明感のあるサウンドを武器に活動を続ける彼らも劣化を免れていることが驚きだ。本ドキュメントはそんな"a-ha"が歩んだ40年を残されたアーカイブ映像と本人たちのコメントで綴る、MTV世代には懐かしく、若い世代にはヒット曲の歴史が学べる貴重な体験になるに違いない。
特に。ヴォーカルを務めるモートン・ハルケット(62歳)の未だ衰えぬファルセットの響きには、時間を超越した美しさと力強さがあって、もう一度"a-ha"を聴き直してみたくなるのだ。
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