「牝犬のおケツをひたすら追い回す」ストレイ 犬が見た世界 カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
牝犬のおケツをひたすら追い回す
20世紀初頭に野犬の大量処分を行ったトルコは市民からの猛反発を食らったことで180度転換し、犬の安楽死や野犬の殺処分を禁止する法案を制定し、今日に至っている。首都のイスタンブールでは野犬のための餌や水を配置しているらしい。
カメラは大型犬を低アングルでひたすら追う。
腰が痛くなりそうだ。
どうやらメス犬。
メスのおケツをひたすら追いかけ回すのは野暮だが、監督は香港生まれの中国系アメリカ人女性。犬好きであることは間違いないが、ムツゴロウさんのようなカリスマ性があるせいかもしれない。撮影対象の野犬が慣れるにはかなりの時間を必要だったに違いない。
オスだとふぐりがぶらぶらして、可笑しくて笑ってしまい、この映画のテーマがぼやけてしまいそう。
ともあれ、この犬は実に堂々として、威厳がある。そして、のびのびとしている。イスタンブールの人たちは昔から東西文化交流の地で揉まれてきたせいか、おおらかである。苛めたりしないからだと思う。この犬たちを通してそれが感じられた。
予防注射は国が行い、耳に管理札がはめられている。しかし、去勢はしないみたいで、可愛い子犬を連れた母親犬を中心にした家族を世話する港湾労働者のオジサンたちもまた家族。
シリア難民のストリートチルドレンが子犬とボロ毛布にくるまって寝ているカットにほっこり。共生、共存。共依存。
増えすぎないのだろうか?
それが心配。
トルコ経済の停滞とコロナやウクライナ侵攻の影響で人々が犬の世話をお荷物と感じれば、犬にはそれがすぐ伝わってしまうだろう。そうなれば、イライラし、人を恐れ、噛みつく犬が増えてしまうかもしれない。それはとても残念なこと。
コーラン?の曲に合わせて遠吠えするラストはおみごとおみごと