劇場公開日 2022年3月18日

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「犬だけでない、もう一方のストレイ」ストレイ 犬が見た世界 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0犬だけでない、もう一方のストレイ

2022年3月19日
PCから投稿

このドキュメンタリーを見ながら、イスタンブールを旅した時の記憶が蘇ってきた。路線バスから望んだ景色には必ずと言っていいほど野良犬が写り込んでいたし、この映画の舞台の一つと思しき旧市街では、可愛らしく尾を振る犬とも、それから舌をだらりと垂らした危なっかしそうな犬とも何度となくすれ違った。あの犬たちが誰からも束縛されずに生きていけるのには理由があったことを、今になって初めて知った。本作は紀元前の偉人が遺した犬にまつわる箴言をところどころに配しながら、あくまで犬の目線でイスタンブールの町を見つめる。どうやらこの社会で犬は特別な存在のようで、自分の飼い犬でもないのに餌を与える大人たちがいれば、野良犬に自らの状況を重ね合わせるかのように慈しむ親のいない子供たちもいる。中には子供だけで廃墟に寝泊りし、シンナー中毒で表情が虚ろになった子も。犬と子供。二つのストレイ。この街が持つ側面を垣間見た思いがした。

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牛津厚信