「映画音楽という「制約」を「今回のお題」に昇華したマエストロ」モリコーネ 映画が恋した音楽家 momokichiさんの映画レビュー(感想・評価)
映画音楽という「制約」を「今回のお題」に昇華したマエストロ
「自分が良いと思うものが認められない」
「自分の力を発揮する場がない、与えられない」
「自分が携わる分野が低く見られている」
クリエイティブに携わっている人はもちろん、志ある会社員ならこのような壁に悩まされることがあると思う。私もそう。ただ私はこのような状況下で、拗ねて、無気力になって、くだを巻いて「放棄」した。
モリコーネは違った。腐らず、放棄せず、当時下に見られていた映画音楽でも全力を注ぎ、監督に迎合するのでなく、かといって頑なになるのでもなく、結果として良い音楽を作りあげ、ついに自分の音楽を世の中に認めさせ、自身と映画音楽の立場を確立した。
何が私と違うのか?
まず感じたのが自分の音楽・感性に対する「絶対的な確信・信頼」だ。「この映画にはこの音楽じゃないと!」ともはや使命感に近い域に達している。ここまで自分の仕事やアイデアに絶対的な確信を持てるだろうか。それだけ信頼できるだけの才があったいう点も大きい。
次に、意外だが「人の意見を聞く耳も持っていること」。こういう人って、兎角自己満足に陥り世の中に認められずに終わることが多い。でもモリコーネの曲は広く世の中に支持された。監督の意見に一度は毒づいて帰ってしまっても後で思い直して修正したり、複数案を持ってきて「〇番だけは選ばないでほしい」と釘をさすも、いつもそれが選ばれてしまったり(笑 気難しそうな面(見た目も)がありながらも聞く耳も失わず、それが先鋭的・前衛的になりすぎず、新しいけれど大衆が理解できる曲を生み出し、商業的成功をもたらせたように思う。
映画音楽にはクライアント(監督)がいる。顧客(観客)がいる。映像(商材)がある。それらを無視しては成り立たない。自分のやりたいことと、周りの意向をどう擦り合わせるか。時には憤慨しながらもうまく消化&昇華して良い作品にしていく才があったように思う。
あとこれは上述の2つに比べれば些事だが「仕事が早いこと」。 依頼すればすぐにもう2曲できている、など仕事が早いことを示すシーンがあった。早くあがってくれば、調整や手直しや時にはやり直しをする時間もできる。よりいい映画になる確度があがる。依頼者側からすれば非常に頼もしかったであろう。映画音楽という制約の中で自分を発揮することを楽しんでいたからこそのスピードであるように見えた。(心に何らブレーキがない。)
自分の全人格を五線譜に発露することを喜びとする一生。
ただ良い曲、自分が思う曲を作り続けることに注力した一生。
とても幸せな人生であったと思う。
※映画としては複数人の関係者にインタビューした映像で構成されるが、お題ごとに皆に聞くものだから単調で退屈な面もあった。(途中睡魔を我慢するのが大変であった。) 都度全員のインタビューを載せなくても。まあ、大御所ばかりにインタビューしてたからカットは難しいか。。(笑
※「ニューシネマ・パラダイス」のところはもっと時間を割いて欲しかったぞ。
momokichiさんの、一般的ない仕事に置き換えた視点からのレビュー、目から鱗です。
確かに芸術とか才能という面だけに囚われると気が付きませんが、スピード感やアイデアに選択肢を与えてのプレゼン❗️
という視点で見ると一般的な仕事における信頼関係の構築にも通ずるものがありますね。素晴らしいレビュー、ありがとうございます。
今晩は。
今作は”ドキュメンタリー映画にしちゃ、、長いな・・、”と思いながら劇場に足を運んだのですが、凄かったですね。製作者サイドが版権を持つ方々に交渉して写真ではなくて、フィルムを流してくれたので、全く飽きずに大変面白く鑑賞しました。
で、先々週からパンフレットに掲載されていたモリコーネさんが劇伴を担当した映画を少しづつ観ていますが。実に実に面白い。
私が生まれる前に、こんなに面白い映画が製作されていたんだ!と思いながら少しづつ鑑賞しています。では、又。返信は不要ですよ。