劇場公開日 2023年1月13日

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「マリア夫人」モリコーネ 映画が恋した音楽家 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5マリア夫人

2023年1月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

冒頭、仕事部屋へ移動し不意に床に仰向けになるモリコーネ。そしてまるで儀式のような体操を始めます。その後、仕事机で譜面に向かい、考え込み、そしておもむろに音符を書き始めます。そこには楽器などはなく、全て頭の中で音を紡ぎ、構成していくのです。それはおそらく、彼の確固たる音楽理論があるからこそのことでしょうし、また尽きることのないアイデアの引き出しに、作品を振り返ってその多様で独自な音楽たちに驚愕します。
映画音楽制作時には、作品のイメージを監督と共有しつつ、時に彼の提案する音楽に作品性が寄っていき、仕上がればもうモリコーネの劇伴なしでは成立しないような感覚にさえ思えます。非常に印象的で、50年以上前の作品にも関わらず古さは感じられません。むしろ、現代においても多くのミュージシャンが彼の音楽をカヴァーしたりサンプリングしているし、また100年後にだって「クラシック」として語り継がれていくのでしょう。
正直、この手のドキュメンタリーにありがちではありますが、語り手がコロコロ変わる編集は正直集中力が続かずに疲れます。ただ、中盤以降は私でも観て知っている映画が、その断片とは言えモリコーネの音楽と共に観られるシーンのアレコレに、劇場のスクリーンと音響で鑑賞できる喜びがあり、また改めて観直したくなります。勿論、その時はモリコーネの音楽を噛みしめながら。
そして要所要所で語られる夫人・マリアさんとの仲が素敵過ぎ。作り手であるアーティスト達からの評価と人気が高い彼も、アカデミー賞のオスカーを手にするまでには時間がかかりました。そんな彼が2007年にようやくアカデミー賞「名誉賞」を贈られ、スピーチでマリアさんに感謝を伝えるシーンに感極まること必至です。

TWDera