「変態映画だからこそちゃんと人間を描いてほしい」女子高生に殺されたい レントさんの映画レビュー(感想・評価)
変態映画だからこそちゃんと人間を描いてほしい
何やらセンセーショナルでキャッチーなタイトルからそそられて鑑賞。パラフィリアの主人公が自分の願望をかなえるために周到な計画を立てて実行していく様を描く。
女子高生に殺されたいということからやはり性的倒錯者なんだろう。女性に鞭で打たれたいというマゾ的な快楽を求めてるんだろうか。
主人公の東山はその出生時にへその緒が首に絡まったという過去が述べられるがそれがこの性癖の根拠にはならないだろう。そもそも記憶にないのだから。このエピソードはあくまでも作品を盛り上げる効果しかないだろう。
そんな彼が当時八歳で大の大人を絞め殺した少女の事件を目にしてからその少女に病みつきになり、女子高生になった彼女に自分を殺してほしいという願望を抱く。
その彼女が通学する教師が生徒と交際をしてることを告発して自分が代わりに教師として赴任し具体的な彼の計画が実行に移される。
彼は生徒を性的に見るなどありえない、だから前任の教師に対して罰を与えたなどと主張するが、彼も生徒を自分の快楽に利用しようとしてる点で同罪だろう。いくらその生徒が罪を被らないように配慮していたとしてもそれで自分の行為を正当化できない。客観的には彼も前任教師と同罪だ。
兎に角全編にわたり用意周到な彼の計画を見せられつつ、彼の標的である女子高生が誰なのかというサスペンス的な展開を見せるが、どうにも盛り上がらない。
いつも映画を見て思うのは、作り話なんだからその物語に観客が入り込むにはそれなりの説得力とか登場人物への感情移入をさせないといけない。
噓の物語であればあるほどそこが作りての腕の見せ所なのだが、本作はそこができていない。
興味を引くようなパラフィリアの主人公という設定、そして彼の標的は多重人格の少女でその人格の一つに怪力の殺人者が混じっている。その怪力のキャサリンをタイミング良く降臨させるのが彼の狙いでそのために他の女子生徒をうまくマインドコントロールする。そして多重人格少女の親友は地震を感知したり死を感じ取ることのできる特殊能力を持つ少女。
これらの設定が原作通りかはわからないが、絵空事に絵空事を重ねすぎて、物語に入り込むことができない。ただ物語のうわべだけを追う形になってしまう。
登場人物の心理に共感するとかそんなことはまず不可能。確かにみんなノーマルな人間ではないがそれでも物語の登場人物として最低限感情移入できる工夫がほしいところ。
Xメンのミュータントたちの方が見ていて感情移入できるのに本作の登場人物に感情移入できないのは致命的。だから物語がどうなろうと、主人公が最後に望みをかなえようがどうしようが興味を持てなくなる。
人目を引くようなアイデアを詰め込んでそれだけで物語が面白くなるわけじゃあない。やはり人間を描けてないと見ていても面白くない。
変態を描くには普通の人間を描けないとその変態が際立たない。変態に魅力も感じない。