「夢にまで見た純愛」女子高生に殺されたい ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
夢にまで見た純愛
古屋先生原作作品の実写化は成功傾向にあり、実写邦画の中でも異質だなと振り返りつつ鑑賞。
いや〜今作も素晴らしかったです。城定監督の作風は正直好きではないのですが、今作はその禍々しいまでの変態っぷりとしっかりした物語がベストマッチしていました。
まず役者陣が本当に凄いです。田中圭さんの清潔感のある変態、今までにも様々な役柄へと変貌していましたが、ここまで振り切った演技をされるともう白旗を上げるしかないです。頭はおかしいけれど、普通を装える人の演技がたまらないです。「哀愁しんでれら」のように途中から加速して本性を表していくタイプではなく、最初からその異常性を発揮しつつも、化けの皮が剥がれるのは最後のシーンだけというなんとも巧みな役。恐れ入りました。南沙良さんの憑依っプリもお見事です。「もみの家」で拝見していこう追っている女優さんですが、過去1を更新しました。通常の真帆ともう一つの狂気的な人格、そして暴力性を秘めた奥の方にある人格と、3役をやられていたのですが、その豹変っぷりが素晴らしいです。ドスの効いた声で真実に近づいたり、力でモノを言うように東山を絞めていく様子は本当に悍ましかったです。河合優実さんも流石で、オドオドしていつつも自分の芯をしっかりと持っていて、「サマーフィルムにのって」での天真爛漫なビート板とは全然違う様子に驚かされました。スピリチュアルな力を持っている事にも何も驚かない説得力のある演技でした。そして脇を固める大島優子さん、細田佳央太さんも凄いです。特に大島さんのバイプレイヤーっぷりは最高でした。
物語も女子高生に殺されるための軸作りをしていくといえばそれだけなのですが、その過程が非常に面白く、恨みを買うようなものではなく、相手を惚れさせて地盤を作っていくのも巧みな原作から上手く持ってきているなと思いました。真帆がどうして人格分裂を引き起こしたのかという問いに対しても哀しいバックボーンが語られ、非常に説得味のあるものでした。
最後は解釈次第でハッピーエンドかバッドエンドかで分かれてしまいそうですが、自分は怪しいハッピーエンドという曖昧な解釈で決着をつけました。どちらの捉え方をしても面白いに変わりはないです。今年のベスト候補です。
鑑賞日 4/19
鑑賞時間 11:00〜13:00
座席 H-6