「脚本と演出に引き出されたキャストたちに宿る猟奇、圧巻の傑作」女子高生に殺されたい たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
脚本と演出に引き出されたキャストたちに宿る猟奇、圧巻の傑作
今年ベスト…眼福すぎて我得な女優陣に田中圭さんの猟奇が絡む。それを一筋で描かない圧巻の脚本、骨太な演出で魅せる城定秀夫監督の凄さったら…。圧巻。
『アルプススタンドのはしの方』から追いかけている城定秀夫監督が、いよいよ商業映画に殴り込み。ピンク映画で培った、恍惚な哀れな人間味が堪らなく、作品のアブノーマルさを掻き立てる。それでいながら、因果を見せることで「弱み」も逃さない。思春期だけでない心の揺らめきを引き出しながら進む様は、サスペンスであり、ドラマでもある。その節々にエロスが混じり、狂気を加速させる。
凄くシンプルな導入から、ヤバイ雰囲気を逃さない。あらゆる女子高生を透過しながら、彼の人間性に迫っていく。その連鎖の中にも、画が凄く多彩に出てくる。光を多用した感情の起伏にスリリングな気持ちを駆り立てられながら、息を呑むように観ていく。そこに応えていった俳優の皆さんが本当に凄い。『惡の華』では出しきれなかった共感性も置いておきながら、淀みが痛みに変わっていく。それがなんとも美しく、痛々しい。
そして何より、若手キャストが皆素晴らしい!この時代に台頭する若手がこれだけ多種になったことは、本当に喜ばしいこと。それを見事に使い分ける城定秀夫監督の手腕ったら。『愛なのに』とはまた違う河合優実に序盤は掴まれ、莉子さんや茅島みずきさんもカラーを発揮。そして南沙良さんも見事。
大島優子さんや細田佳央太さんも土台が固いので見事。どこにピントが変わっても軸はブレないし、闇がどんどん深くなる。そこに息つく暇はなかった。自分の為の映画でもあったし、これから飛躍することが約束された若手たちの稀有な作品になること間違いなし。
そして最後に、田中圭さんが化け物だということを改めて思い知らされた。演技が上手いだけではない、器の中に宿した淀みが巧みに表現されていて、最後まで魅了されていた。可笑しさの中に人間としての心が透けてくる辺りがなんとも胸を刺す。
アブノーマルな作風が故に選ぶ部分はあるものの、心理描写に重きを置いたからこそ見える景色が素晴らしい。完成度が高い、見事な実写化。