「忠実再現」生きる LIVING AMacleanさんの映画レビュー(感想・評価)
忠実再現
どんな脚色がされるかと思っていたが、想像以上に原作に忠実だった。
日本とイギリス、島国という共通項からか、違和感なく入り込めた。カタブツの公務員は、さすがに紳士の国で、みなスーツでバシッと決めていてカッコいい。だが、机に山積みの書類と、倦怠感の漂うオフィスは、昔の役所というイメージは日本と変わらない。
冒頭は少しだけ味付けされていて、列車通勤に部署の新人が加わるところから始まる。確か原作はそんなくだりはなかったような。原作では、たらい回しのお役所仕事が当たり前の職場。それが普通の毎日で、ワタナベ課長は自分を無くしてほとんど生きていない、とかいう説明から始まっていたような。
初老の公務員が、突然のがん宣告を受ける。当たり前の日常が急に意味のないものに感じ、生きる意味を見つめ直す物語だが、その過程が場所がイギリスというだけで、ほぼ原作をなぞる。酒に溺れてみたり、若い女性を追ってみたり。最愛の息子にはなかなか真実を話せない中、職場に行く気にもならず、ふらふらと行き惑う初老の男性の悲哀というか、戸惑いが上手にまとめられていて、物語に引き込まれていく。彼の求めるものは見つかるのか、余命をどのように使うのか。改めて、ハラハラしながら観ることができた。
コロナ禍から常態復帰しつつあるこの頃。マチネーに観て、柔らかにカツを入れてもらうのに、丁度良い作品。
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