劇場公開日 2022年6月3日

「記録映画でも、ドキュメンタリーでもなく、「作品」だったが…」東京2020オリンピック SIDE:A KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0記録映画でも、ドキュメンタリーでもなく、「作品」だったが…

2023年1月20日
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鑑賞方法:DVD/BD

この作品は、
好意的な批評が少ないことを中心に、
かなりマスコミで話題になっていたが、
ディスク化されたのを機に
レンタルして初鑑賞。

公式記録映画と位置付けられる作品だが、
私には、記録映画でも、
ドキュメンタリーでもなく、
良きにつけ悪しきにつけ、正に
「作品」との印象だった。

日本選手の活躍シーンとして描かれるのは、
柔道の大野選手や、女子バスケット、
そして女子ソフトボールの試合位だ。
柔道の阿部兄妹も、水泳の大橋も
全く登場しないので記録映画ではないし、
ドキュメンタリーと言うには、
テーマが絞りきれてはいなく、
徹底した客観性がある訳でも無い。
感じるのは色濃い河瀨直美監督の作家性だ。

コロナ禍の中での反対デモや
無観客の中での大会の描写だけではなく、
国際的には難民問題や国籍変更・人種問題に
翻弄される選手、
また国内では沖縄や広島・福島の問題等々、
選手を通して膨大な歪な国際世情を描く。

しかし、この東京大会の開催の意義に
ついては散々語り尽くされた後でもあるし、
一つのオリンピック大会が
全ての世界の問題を背負ったような視点での
河瀨直美監督の手法には
特段のオリジナリティも
感じることは難しかった。

また、意識的にママさん選手と共に
赤ちゃんが多く描かれた。
将来への希望を託したいとの映像だろうが、
これも、ありがちな映像手法に過ぎなく、
映画は本来、エンターテイメント性の色濃い
芸術でもあることから考えると、
河瀨監督の作家性が
裏目に出てしまった印象だった。

 1/24再鑑賞
友人との話から、己の理解が及んでいなかったと思い再鑑賞。

前回よりは、
勝ち負けだけではない競技への思いや、
アスリートとしての高見への矜持の観点での
河瀨監督の狙いへの理解が
少し進んだような気がする。

しかし、このテーマから、
限られた競技シーンの中で
柔道や女子バスケットの取り上げは
分からないことは無いが、
ソフトボールの試合を長々と描写したのは、
今後は採用されない競技だからとの
思いがあったのか分からないが、
テーマを曖昧にする一因になったような
気がする。

また、
映像作家がインタビューを多用したのは、
そもそも
映画とは映像からにじみ出てくる真理に
感動するものだと思うのですが、
それを言葉で説明されているようで
感動には結び付かなかったような気もした。

KENZO一級建築士事務所