すずめの戸締まりのレビュー・感想・評価
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新海流ロードムービー
トマソン!?
日本の地下に蠢くミミズを封印する旅をすることになるJKの話。
宮崎で暮らすJKが廃墟を探すイケメンに一目惚れし、後を追いかけた先でやらかしちゃって巻き起こるストーリーってことで、知らなかったとはいえ一言で言うと強烈なマッチポンプですね。
宮崎で戻してたら?とか、東は誰が?とか、疑問に思ったけれど同時じゃないとダメとかなのかな?ていうか、ダイジン抜いたってことはそっちに入れていたってことでは?とか他にも色々なんで?はついて回るけれど、まさかの12年後のロードムービーとは…。
ジブリリスペクトに懐メロにという賑やかしもあったりしてなかなか面白かった。
文句の付け所がない。
タイトルなし(ネタバレ)
九州宮崎県の静かな町で暮らす17歳の少女・鈴芽(すずめ)。
ある朝、扉を探しているという青年と出会う。
その扉は廃墟にあるという。
ならば、と教えた鈴芽だったが、気になった彼女は、青年より先に件の扉を見つけ、付近にあった猫に似た石をどけ、扉を開けてしまう。
それは「常世」に通じる扉で、荒ぶる神を閉じ込めておく扉だった・・・
といったところからはじまる物語で、その後、石から変じた猫に椅子に変えられた青年・草太とともに、石から変じた猫を追って扉を閉め続ける旅が始まる。
『君の名は。』『天気の子』とあわせて「三部作」と呼んで差し支えない本作は、災害を題材にしている、その災害に関わる少女がキーパーソンとして登場するなど、前2作との共通点も多いです。
そんな本作、個人的には前2作よりも好感が持て、面白かったです。
大災害をなかったことにしてしまう(ある意味、乱暴な)『君の名は。』、大災害の後であっても、その傷跡は悲観するものではないかもしれないと(これまた乱暴なことを)いう『天気の子』を経て、本作では「大災害そのものは大災害として受け止めた上で、それでも未来に生きていける」と宣言しているあたりは、ストリーテリングとして王道であり、災害との向き合い方を新海誠監督が変化したと感じました。
荒ぶる神(みみずと呼ばれる土霊)、奔放な神(ダイジンと呼ばれる猫)などは古来の神話からのイメージで、宮崎駿監督作品でも引用されていましたね。
この他にも宮崎アニメとの類似点は、ユーミン『ルージュの伝言』、軽自動車、自転車、声優でない俳優のキャスティングなどがあります。
そういえば、キャラクターデザインも似ている気がします。
また、人間でない異物に変えられたひとを目覚めさせるのが愛するひとのキスなどは、西洋のフェアリーテイルに登場する要素だし、異世界の扉の向こうでの自己との再会もこれまで繰り返されて他の映画の中で登場しましたが、それらの「おなじみ」な要素が満載なのだけれど、面白かったと思えたのは、やはり「大災害そのものは大災害として受け止めた上で、それでも未来に生きていける」という未来に対する力強いメッセージのせいでしょうね。
昔ながらの「日本」と今の「日本」を感じる作品
人生で初めて、アニメ映画を劇場で観ました。
(新海誠作品の前2作はロードショーで観ました)
物語の筋立ては割と単純なので、ここでは物語を盛り上げる設定について「面白い!」と感じたことを残しておきたいと思います。
①地震を引き起こす元凶とされている「ミミズ」。
発生場所は人の住むことのなくなった後ろ戸で、ミミズの実体は「閉じ師」の一族しか視認できない。
主人公・すずめは幼い頃に偶然「ミミズ」のいる「常世」に迷い込んだから視認できた。いわゆる例外?
地震大国の原因をそんな化け物に持ってくるか、とニヤリとしてしまいました。古くから目に見えないものを畏怖してきたこの国だからこそ、説得力のある設定ですね。
「ミミズ」が出てくる後ろ戸が存在してはいけない。昔の日本人は常識としてそのことを知っていて、だからこそ暮らさなくなった住居や城を燃やしたり撤去したりして痕跡を残さないようにしたのか…?
などと、架空の設定なのに現実のことのように考えてしまう自分がいました笑
②「岩戸」鈴芽と「宗像」草太。
この2人の苗字も『記紀』にゆかりの深いもの。
前者は天照大神が隠れ、暗黒の世が訪れた神話に基づく。しかもその舞台とされる天岩戸神社は宮崎県に実在。
後者は天皇家を支えた海人族のこと。福岡県にあり、「海の正倉院」沖ノ島や宗像大社がその名残を留める。僕の故郷でもあるので、映画を観に行こうと思った理由の一つです。
③芹澤の車
中古で買ったというマニュアル車。
僕もマニュアル車乗りなので、ギアチェンジの描写だけでテンション上がりました笑
宮崎→愛媛→兵庫→東京→宮城?と旅をしていく形で物語が進んでいくので、きれいな絵で描かれた日本の風景を楽しむこともできました!旅に行きたい…。
東日本大震災のことにも勿論触れており、忘れちゃいかんよな、自分が鈴芽の立場になってもおかしくない、と東北に行って震災遺構を見た時のことを思い出しました。
観に行ってよかったです!
やはり空模様に関する表現が秀逸
題材が題材なので観る人によって、具体的には震災被害と地震に対して過度な反応を持つ人には余り薦められないのかもしれない。
ただ、その点を除けばキャラクターも魅力的で、ストーリーラインもしっかりとして、鑑賞後の後味の悪さみたいな部分もなく、万人向けの安定した作品になっていたかと思う。
ただまぁ、ダイジンの結末としてはちょっと可哀想だなというか、神様の思惑など理解できないと言えばそりゃそうなのだが、やはりすずめの家に入るってのは望みだったのだろうから、そこがケアされないのはなんというか…こう、感謝とか敬意とか、いや祝詞がそれにあたるのだけど、2人で御供えとか持ち寄ったりなんかするシーンとかあると嬉しかったなーくらいの細かい話
過大評価映画。恋愛要素が意味不明。
心を救う
映像は相変わらず最高に綺麗だったが、他は微妙
映像と音楽は良い
誰かに愛されているということ
震災をテーマにしつつも、本質は「愛」の物語。
誰かを愛すこと、愛されることの素晴らしさや愛しさ、そして「当たり前」ということに対して丁寧に描ききっていた。
一人の少女が過去と向き合い、成長する。
そこに震災を題材にした。
当たり前に話すこと、当たり前に遊ぶこと、当たり前に人を愛すこと、当たり前の思い出を作ること。
それらが瞬時に失われ、目の前から消えることの辛さ・虚しさと同時に、失って気付く「愛していた・愛されていた」こと。
究極的に愛を追い求めて奔走する姿や、「閉じ師(仮)」になることで伝わってくる思い出達。
只要石のダイジンを追うだけではなく、1つ1つにしっかりと意味があることを真正面からぶつけてきた映画だった。
上手く纏まっていないが、簡単に言うなら「全部最高」。
…ところで結局ダイジンは何者だったんだろうか。
個人的には幼いすずめ自身だったようにも思える。
最終的に「すずめが迷い込んだ常世を閉じる」ことが目的である為、大事なことを忘れていたすずめに気付かせる為に、過去の自分がダイジンとして現れたのでは…?
「過去にケリを付ける」ことは過去を振り返らなければならない=「すずめの成長の要」として彼女を導くこと。
…んー、せめてここを描いてくれたら良かったような気もするけど、それを忘れるぐらいの素晴らしさだったことは確か
過去を閉じる
新海誠監督作品に共通するテーマとして日本の災害が挙げられるが、今回の映画は過去一で災害と向き合った映画となっている
災害を経験していない人々には蛇がみえず、つまり危機感も薄いし、死が身近だとは思えない
一方で被災地や被害にあった人々は常に死を身近に感じ、災害の経験はトラウマとして残ってしまう
それでも好きな人ができたり、なりたい職業がみつかったりとそれぞれ自分の目標と生きる意味を見つけ、過去の災害を受け入れて生きていく
現実をほぼ完全再現でアニメーションにすることで、災害の現実味は増し、他人事の話とは思えない
これまでの映画のようなノイズになっていたコメディシーンは抑えめで、個人的には過去最高の新海誠作品だと感じました。
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