「タイトルなし(ネタバレ)」すずめの戸締まり とまとまとさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
映画の日。今年は『すずめの戸締まり』を観に行った。新海監督作品は初鑑賞。
『君の名は』の頃から映像の美しさで話題になっていたのは知っていたので、作品を見ながら確かに美しいなと目を奪われた。
結論から言えば、人って自分次第でこんなに変われるのかと思った。そして改めて震災の記憶を忘れてはいけないと思った。
予告では想像できないようなストーリー。
ラストにかけてのシーンで、色々と繋がって涙が出た。
でももっともっと色々と暗示していることがあるのではないかと、気になって調べてはっとさせられた気付きたち。
〜以下ネタバレ
①「うちの子になる?」というセリフ。
環が鈴芽に言った言葉で、鈴芽を救った言葉でもあるけど、同時に環から他のものを奪うきっかけにもなった言葉。同じ言葉を、鈴芽もダイジンに言っていて、鈴芽もその後学校生活だけでなく命でさえも捨てる覚悟でダイジンを追いかけることになった。
②初対面の草太を「どこかで会ったことがある」と言っていた理由がラストの常世のシーンで分かる。常世は全ての時間が同時にある場所。
③1度なくした椅子。(実際は津波に流されてしまい、死者の世界である常世に流れ着いた。これを成長した鈴芽が見つけ、幼い自分自身に渡した。という考察がされていた)
④12年間ずっと燃えていた常世。(被災者である鈴芽の見る常世。12年間ずっと燃え続けていたように、まだ震災は終わっていないことを暗示しているらしい)
⑤
鈴芽の故郷の宮城県に向かう道中、芹澤は「このへんって、こんなに綺麗な場所だったんだな」と語る。すずめはその言葉にハッとし、「綺麗?ここが?」と呟くように返す。“被災者”である鈴芽と、被災者ではない芹澤の被災地に対する見え方の違いを明確に描き出している。震災の記憶が薄れつつある人々にまだ終わっていないことを告げている。
⑥
東日本大震災が起きたのはお昼。多くの人たちの最期の言葉が「いってきます」「いってらっしゃい」となったと思われる。(劇中でも多くの人たちが鈴芽に対し、色々な方言で「いってらっしゃい」と言い、その言葉が鈴芽を応援する言葉にもなっている。)
そして最後のシーンは言えなかった「おかえりなさい」。
⑦草太のセリフと坂や日向/日陰の演出の工夫。
〜〜〜
当時小学生だった私は東京に住んでいて、放課後のクラブ活動中にいつもより大きめの揺れがあって、でもすぐに収まったから怖かったね〜なんて言って、教室に戻ったら「保護者が迎えに来るまでは帰れない」と先生たちが慌ただしくしていて、そんなに大きな地震だったのかと思いつつもあまり理解できていなかったけど家に帰ってテレビをつけたら、いつものテレビ画面ではなくてどのチャンネルでも、左側と下側に常に地震関係のニュースが流れていて、映像もずっと流れていて、同じ国に住んでいる人がテレビに映る大きな揺れや大きな波を実際に体験して、多くの人が亡くなって、行方不明の方も沢山いると知って、少し考えただけで恐ろしくなって悲しくなって、小学生の頭じゃ理解できないくらいの衝撃的で信じられない出来事だったから被災者ではない私でさえ、今でも忘れられない記憶。そのあと被災した同い年の子達が一時的に自分の小学校に来て、いろいろな話をしてくれて、本当に起きた出来事なのだと、だんだんと理解していった。そんな記憶もやはり被災した方と直接被災していない人とでは全く心に刻んだ記憶の数が違うと思うし、地震描写はきっと被災された方々にとっては辛い記憶で、リアリティーもあるし、気軽に観てほしいなんて言えないけど、この作品は伝えたいことが痛いほどはっきり、しっかり伝わってきたし、何年経ってもこういう作品で長い歴史の中の1つの出来事ではなく多くの人の記憶を思い起こさせ、残すべきだと思った。(被災者ではない人は時間と共に忘れていってしまうので)
色々な伏線や込められた想いも含めて、もう一度観たい作品。もうすぐ今年が終わるこの時期にまた心に残る作品に出逢えて幸せだなと思った。