「EDは良かったです。」すずめの戸締まり よしさんの映画レビュー(感想・評価)
EDは良かったです。
震災の元となる扉を閉める為、要石の大将を追う少女の奮闘を描く物語。
ヒットメーカー新海監督のオリジナル作品ですね。
物語はロードムービー。前半は、椅子となった草太と共に、要石・大将を追って旅をします。愛媛で、神戸で現地の人の温かみに触れながら、すずめと草太の関係が深まっていきます。
後半は叔母と姪の物語。草太を助ける道行きに、二人の苦悩とすれ違いを描きます。
中盤とクライマックスにあるミミズとの激闘は迫力十分。特に、中盤御茶ノ水でのシーンは、見知っている街並みだけに臨場感を強く感じることが出来ました。
また、お茶の水で草太を失い傷ついたすずめの描写は秀逸でした。心身共に深く傷ついた状態なのに、草太を助けるために力強く歩むスズメの強さに心打たれます。
映像は流石の新海クォリティ。背景もキャラも、そして動きも文句なしの一級品で、物語を引き立てます。
ただ、それでも私的評価は2.5にしました。
この作品の問題は3点。
一つ目は、スズメが旅に出る理由がないこと。言い方を変えれば、旅に出て成長しなければならない理由が序盤に明示されていないこと。
例えば、反抗期をこじらせたスズメが叔母との関係が微妙になっていて・・・とか。
例えば、震災のトラウマがぶり返して・・・とか。
旅に出て色々な人に触れ合い、困難にぶつかり、本音で叔母と喧嘩して、故郷に帰ることでそんな状況が改善する流れなら、物語として深みが増すのでしょう。
でも、そんな前振りがないので、物語全体を浅く感じてしまいます。
二つ目は、スズメが自分の命を賭けて草太を救おうとしたこと。
勿論、愛情の深さと係わった時間はイコールではないかもしれません。でも、自らを要石にして草太を救おう・・・という決断は、極端過ぎます。
その場の感情で「思わず」ならまだ少しは理解出来ます。
草太を救うには、命に危険が及ぶ行動が必要になる・・・なら理解出来ます。
でも、一定の時間を経ってまだ、自らを要石にする決断は、寧ろ現実感がなく興ざめしてしまいます。
これは叔母を救う・・・とからな納得感も出るのですが、流石に浅すぎます。
そして、最後になりますが・・・、声優の力不足。主役を務めた二人、厳しい言い方をしますが、本当に下手くそでした。なぜ、この演技でOKが出るのか理解出来ません。あのクオリティの映像を作り上げたアニメーターの方々への冒涜・・・とすら感じます。
ジブリへのオマージュも戸惑い以外感じることは出来ず、映画としての評価は厳しくなりました。