劇場公開日 2022年11月11日

「心の扉🚪」すずめの戸締まり かなり悪いオヤジさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0心の扉🚪

2023年9月21日
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全世界で500億円以上の興行収入を稼ぎ出した邦画は、現在のところ本アニメのみという、むかうところ敵なしの新海誠監督なのである。作風が“中二病”とか“セカイ系”とか揶揄されたのも遠い昔話、本アニメを見終わった直後の素直な感想はとにかく“分かりやすい”の一言につきるのである。『君の名は。』『天気の子』に引き続き、日本の古代神話に登場するアメノウズメをモチーフにした女の子を主人公にすえているが、日本書紀や古事記なんかを知らない外国人が見ても十分理解できる普遍性が感じられたのである。

そんな神話的要素に加え、時事問題をテーマに絡めることが多い新海監督。本アニメには、東北大震災と過疎化に伴う廃墟問題が、主人公岩戸鈴芽の成長物語の通奏低音として常に流れていて、大人が見ても厭きさせない工夫がきちんとなされているのである。基本的には、日本各地に起きようとしている地震をくい止めるため、女子高生鈴芽、閉じ師草太、白猫ダイジンが旅するロードムービーになっている。その道行きをサポートする道祖神が登場するのも新海アニメの特徴だ。

あらゆる道の最高神として祀られている宗像三女神の末裔であることを想像させる草太は、白猫ダイジンによって、導きの神として知られる八咫烏と同じ3本足の椅子に姿を変えられてしまう。2人を震災の地に導くダイジンは、地震を鎮めるため東西に埋め込まれた要石の化身という設定だ。宮崎→愛媛→神戸→東京→福島と、地震を引き起こすミミズ様が通り抜ける全国各地の後ろ戸を閉めて回るストーリーは、単純明快で実に分かりやすい。前2作にみられた複雑さは皆無といってもよいだろう。

冒頭にリンクするラストの展開は、お子さまにはちょっと分かりにくいのかなあと思ったりしたのだが、SF好きの皆さんにとっては(どこかで見た気がしないでもないが)納得のエンディングだろう。なぜ、草太に初めて会ったはずなのに鈴芽は既にどこかで会っていたような気がしたのか?3.11の辛い記憶を封印するかのように、後ろ戸を閉め続けてきた鈴芽。過干渉のおばさんに言いたいことも言えずアマテラスのように自分の殻にとじ込もっていた鈴芽が最後にあけた扉は、自分の心の扉だったのかもしれない。

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かなり悪いオヤジ