劇場公開日 2022年11月11日

「見てよかった。新海作品でいちばん好き。」すずめの戸締まり うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5見てよかった。新海作品でいちばん好き。

2023年1月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

素晴らしい。
見てよかった。新海誠は天才だと思う。とか言って、新海作品3本しか見てません。

『君の名は。』『天気の子』『すずめの戸締り』三作とも災害に巻き込まれる男女のお話で、それでいて今作に限って超自然的なキャラクターが登場する。大臣と左大臣だ。(ちょっと記憶が定かではないので、登場人物の名前とかはいい加減です、お許しください)いちおう実体として存在するし、誰にでも見える。ゆえにツイッターに投稿されたりする。これがストーリ上、重要な設定になっているし、大きな飛躍だと思う。

アニメではロードムービーは珍しいと思う。行く先々の風景や、映りこむ車までリアルに描き込まれている。もはや実写作品を越えてしまっている。

宮崎を出発点にしていたり、岩戸という姓も間違いなく日本由来の神話世界を意識してのものだろう。それが見事に現代社会とリンクしているので、まるで身の回りで起きた出来事のように入ってくる。

いろんな企業や団体も巻き込んで、いまやジブリ以上の映画プロジェクトと化したのではないだろうか。その影響力は大河ドラマ以上かもしれない。ファンタジーと日常のはざまを描くアニメと言えば、宮崎駿~細田守~新海誠の系譜で語る人もきっと多いのではないだろうか。いずれも現役であるが、登場順に並べさせてもらった。たぶんどこかが欠けてもこの作品は生まれていないと思った。

不満もある。大きいところではメインのイス。あれは居なくてもよかったんじゃないかと。母娘の絆を描くのは他の形でも出来ただろう。結局最後までそこはぬぐえなかった。大臣が活躍すればそれでよかったのに、どうしてもボーイミーツガールの要素が必要だったのだろうか。イスがぴょこぴょこ走りまわっているのは絵的に面白いし、確かにネコに何か神秘的な力が宿っている設定は説明なしでもしっくりくる。でもそれがふたつもすずめにくっついてくるのはくどい。

本当に些細なことだが劇中登場曲もふんだんに使用され、許諾にそれなり予算も掛かっている様子だった。どうせなら増田恵子の歌った『すずめ』を使って欲しかった。中島みゆき作なので今なら彼女が歌い直すのもアリだと思うのだが、これだけ大掛かりなプロジェクトなら当然誰か提案したはずなので、やっぱり監督が却下したのだろう。

なんにしてもいい映画だった。すごくいい時間を過ごせた。しあわせだ。

うそつきカモメ