「神つながり視点の感想」すずめの戸締まり 悶さんの映画レビュー(感想・評価)
神つながり視点の感想
【鑑賞のきっかけ】
普段、あまりアニメを観ない私が、劇場まで足を運ぶアニメ作家。
その一人は、宮崎駿でしたが、彼が引退した今、唯一のアニメ作家が、新海誠。
その新作となれば、劇場鑑賞しないわけにはいきません。
【率直な感想】
<鑑賞前に発見したこと>
劇場鑑賞の前日、公式HPを訪れました。
題名と予告編から、「すずめ」という少女が主人公だけど、どんな文字なのか、と思いまして。
「岩戸鈴芽(いわとすずめ)」
そうか、鈴に植物の芽か…という思いと当時に、私は、苗字に注目しました。
「岩戸」。
「戸締まり」ということから、連想した「天岩戸」から来ているのだろう。
天照大神の神話で有名な「天岩戸」から、天を抜いて、「岩戸」。
と、次の瞬間、鈴芽と巡り合う男性の名前が目に入りました。
「宗像草太(むなかたそうた)」
何と、「宗像」!
歴史好き、神社仏閣巡り好きとしては、見過ごせない苗字ですよ、これは。
九州の最北端、福岡に、「宗像大社」という日本最古の神社の一つがあります。
日本海に面した社は、「辺津宮」と呼ばれ、そこから、海を10キロほど北上した「大島」という島に「中津宮」、さらに50キロほど北上した沖ノ島に「沖津宮」。
この三つの宮の全域が、「神域」であり、三宮を総称して、「宗像大社」。
このうち三番目の「沖津宮」は、神職など限られた人だけしか島に立ち入ることはできません。
そして、この三宮には、それぞれ祭神が祀られているのですが、その祭神は、「天照大神の子である女神たち」なのです。
つまり。
◆岩戸鈴芽→天岩戸→天照大神→その子の三女神→宗像大社→宗像草太
ということで、物語が始まる前から、二人は、天照大神という神つながりの関係なのです。
<いよいよ鑑賞してみると>
「君の名は。」では「彗星」、「天気の子」では「天候」をモチーフにしていました。
これらは、「自然現象」という共通点があり、今回はというと、公式HPでは、「災い」としか表現されていないので、ここでは、どんな「災い」なのかには触れません。
さて、この「災い」の危機は、映画が始まって間もなく、主人公・岩戸鈴芽の住んでいる地域で起こります。
ここで、彼女の住んでいる場所が分かるのですが、「宮崎県」。
ここには、「天岩戸神社」があります。
「岩戸」という苗字は、単に「戸締まり」からの連想だけではなく、その名を冠した神社(神域)が存在していることで、新海誠からのメッセージを感じることができます。
物語は、岩戸鈴芽が宗像草太と出会い、ある目的を持って、県境を越えて東へ向かって旅をしていくというもの。
旅の途中、ある都市で、親切な女性と出会い、一晩を過ごすのですが、この女性の名前にも、驚きです。──「二ノ宮ルミ」。
二ノ宮とはその地域で、二番目に格付けされる神社なのですが、注目は、神社は登場しないけど、彼女の名前から、そこも、物語構成上は、「神域」ということになります。
<物語の向かうところは…>
あくまで私見ですが、この物語では、「宗像大社」の「三宮という神域」を、「日本全域まで拡大」していると見立てることができると思います。
つまり。
第一の宮(辺津宮)=天野岩戸神社(宮崎県。鈴芽の住所)
第二の宮(中津宮)=二ノ宮ルミの住む都市
そして、岩戸鈴芽は、さらに、旅を続ける…。
そこに待っているのは、第三の宮(沖津宮)ということになります。
この第三の宮(沖津宮)は特別な場所です。「神職以外立入禁止」ということを先述しました。
言い換えると、神様が認めた人でないと立ち入ることができないということ。
「神域」としては、最高位の場所となりますね。
鈴芽がそこに立ち入れたなら、彼女は、「神様に認められた」特別な存在ということになります…。
【全体評価】
本作品は、上述のような「神」つながりのことなど考えないでも、岩戸鈴芽と宗像草太の人間模様や「災い」とどう立ち向かうかを観ているだけで、十分に感動できる作品であると思います。
私も、その部分で深く感銘を受けた作品となりました。
【率直な感想】に長々と書いたことは、歴史好き、神社仏閣巡り好きの戯れ言として捉えていただければ幸いです。