「従来イメージとは違う雰囲気と結末、だからこそ良い!」すずめの戸締まり mokusin takataniさんの映画レビュー(感想・評価)
従来イメージとは違う雰囲気と結末、だからこそ良い!
おもえば『君の名は』は無理解によるいじめを行う同級生、大人達との度重なる確執描写そして何ともモヤっとする結末---話の全てがとにかく苦手だった。調べれば以前の作品達はもっと影のある内容と知ってからは、新海作品は合わないと思い『天気の子』は見送った。
本作も見る気はなかったが、耳に入る評判と信を置いているレビュアーの太鼓判もあり“もしダメでも以降の作品を二度と見なければ良い”程度の心構えで劇場に臨んだのだが---嬉しい意味で裏切られた、何より称賛したいのは記憶ないとかの不安要素なくきっちり再会させたラスト、これが最大の評価点だがそれに次いで新海誠作品の醍醐味であろう綺麗でいて生活感に溢れる背景を『君の名は』では重い展開で意識が分散しそれ所じゃ無かったが、ようやく今作でその美麗さを堪能できた点も大きい。
夏特有の日差しでコントラストが美しく強まった空や緑の木々という監督の十八番背景はもちろんの事、行く先々で訪れる古い民宿やスナックに大学生の住むアパートのどれもが既視感に溢れ、とりわけ主人公が住む島の廃墟はその幻想さと荒廃しつつもかつて人が住んでいた雰囲気が残る街並みとリアルな老朽化描写はとても素晴らしかった。個人的にこの夏にとある古い旅館に宿泊したのもあり、古民宿の部屋の構造は既視感を覚える程リアルに感じた、推しの評論家が“新海監督は観察眼と再現力が凄い”と評していたが正にその通りだと思う。
話も前向きで明るい雰囲気に加え冒険の様なロードムービーは観ていて楽しい、その中で人物のセリフも展開もわかりやすい伏線のお陰で読み解きやすくスルスルと頭に入った---ただ重要アイテム【要石】は、その製法と実態を考えると深い闇が垣間見えそうだが、これは良いとして主人公と叔母の激重確執シーンは突然過ぎてさすがに困惑・・・この確執シーンだけは無理に入れたような感じがして仕方ない。ところで喫煙者が火を付けずにタバコを吸う真似するのは何を意味するのだろうか?煙が苦手な人への配慮かそれとも---何にしろあの友人は面白いイケメンなのは間違いない。
マニアックだと思うがタイトルコールもオマージュしたくなるカッコよさだった。従来だとポエムめいたセリフ言った後にTVアニメのOP系だったが、今作は重厚な扉を閉める音と黒背景に浮かぶタイトルだけなのだが大作映画らしくて好み。
前述の通り、多少新海節が入り混じっていたがこの『すずめの戸締り』レベルに明かるい作品なら再び劇場に足を運んで観に行きたい、是非とも売れてほしい作品だ。
( ^ω^)・・・でも叔母との確執シーンは不要で気悪いので星-0.5。