「モヤモヤする作品、震災を扱うには軽すぎる」すずめの戸締まり めーんさんの映画レビュー(感想・評価)
モヤモヤする作品、震災を扱うには軽すぎる
設定として、過疎化したりして忘れられた土地に残った想いの重さが災害の原因になるという設定は理解できる。ただ、そこにリアルで起きた3.11の震災を結びつけたのは理解できない。
登場人物たちはその災害を防ぐために各地の扉を閉じて災害の発生を防いでいくのだが、 その設定では3.11の震災は人為的に防げたという意味合いにもとれると思う。 設定の中で実際の震災を無かったものに出来たかも知れない世界線を作っているのは虚しかった。
本映画では元々震災があったものとして描かれている。その過去を振り返りながら現実に起こりかけている
3.11並みの大災害を食い止めようとしているなか、
要石の猫が”人が沢山死んじゃうね笑”の様に嘲笑っている描写はとても不快だった。
3.11の時も要石が抜けてしまって地震が起きて その時もそんな事を言っていたのかなと感じてしまった。
そして、その猫も結局いい奴で災害が起きるであろう扉の場所を教えていたと判明したのだが だったらなぜ、もっと主人公に協力的でなくサイコパスの様な言動や行動をしていたのだろうか。 また、主人公の要石への掌返しも軽すぎる気がする。
加えて、この猫の名前はダイジンっぽいという理由でSNS上で決まったのだが、無理やりすぎると思う。そして二つ目の要石もサダイジンっていう名前だったというのもなんとも言えない。
また、知らないうちに二つ目の要石が抜けていて、それが主人公の伯母に取り憑いてとても精神的に厳しいことを言う描写も心苦しかった。
被災した人の心情は誰かに代弁できるようなものなのだろうか。と考えてしまった。 被災者の方の心情を叔母が代弁しているかの様な描写をなぜ描いたのか。
そもそも、何故二つ目の要石も抜けたのか。
そして、その猫の形をした要石も結局いい奴で災害から皆を守ろうとするいい奴として描かれていた。
結局、今までの要石が元に戻って災害を食い止めたのだが、要石に戻りたくない理由や要石の感情や背景が描かれてなさ過ぎて、なぜ最初から石に戻らなかったのか理解できない。
そして、主人公の行動も軽率すぎる。大災害が起きてしまうのにも関わらず、要石になってしまった好きな人(出会って4日程度)を取り戻す為に行動する描写は恋愛の為なら大災害を起こしてもいい、そして主人公が犠牲になってもいいと思っていると感じられる。
たとえ主人公が後に要石になろうとしても3.11の様な災害は恋愛感情と引き換えに起きていいとは思えなかった。
総じて 主人公が死ぬのは怖くないといいきるシーンで、どうしてそこまで言えるのかを描かなかった為に、それ以降の登場人物の発言がすごく軽く見えたと思う。 作者の意図として、忘れ去られた土地や被災地を忘れないでほしいという想いや葬いたいという意図は感じられる部分もある。
しかし、映画の軸が定まってないと感じた部分の方が多い。 ロードストーリー中の友情、主人公の恋愛、親子関係、主人公自身の過去と現在、忘れられた土地への想い、、、
作者自身が震災について書きたいというのは部分的に理解できる。
ただ、詰め込み過ぎて震災がエンタメを成立させるための道具として用いられている様に感じる部分があった。
震災の経験の無い世代が
この映画を観て、ただただ綺麗だと感じたり
本当に起きた地震とか津波とかが美化されてしまうというか、リアルが美しく書き足されて感動を与える道具みたいになっているのが悲しかった。
最後のエンドロールに実際の写真をつけるべきだと思った。