「覚悟して観てください。」すずめの戸締まり モランさんの映画レビュー(感想・評価)
覚悟して観てください。
•作品についていくつか
映画作品、ロードムービーとして、よくできています。今回は人柱の話ではなく、要石は神様でなくてはならなかった。地震を抑えるには人の力はあまりに弱い。草太さんは要石になった後何十年と何百年と時間をかけて神格を持つ存在になっていくんだなと思います。
映画後半で、今まで主人公が行く先々で人々に親しみを持って接してもらえるのは、ご都合主義ではなくダイジンがついてるからだったんだなぁと納得しました。
すずめがダイジンに煮干しをあげる。つまり供物をあげて、「うちの子になる?」と言う言葉で信仰が生まれたからダイジンはあっという間にふっくらとかわいい猫になったし、行く先々でダイジンが人々に注目されSNSにUPされるのは、ダイジンがただの白猫ではなくて神様だからだと思いました。
•取り扱っているテーマについて(個人的なことです)
地震を扱っていることを事前に知っていましたので、覚悟して鑑賞しに行きました。
学校の先生が神戸出身でした。阪神淡路大震災の時にご家族が神戸にいらっしゃって、ご自身は被災しなかったものの、ご実家をなくされ、お母様が被災した話を聞いたことがあります。
私は東日本大震災当時、自宅付近一帯が停電して近所の小学校に避難し、ニュースを携帯で見ながら一晩明かしました。ネットのYahoo緊急掲示板に「自分は無事です」と書き込んだ記憶が思い出されます。
幸い家族はみんな無事でした。でも、そんな私でも映画冒頭ですごく複雑な気持ちになりました。当時の記憶がまざまざとよみがります。冒頭の数分、主人公の夢のシーンで涙ぐみ、席を立とうか迷いましたが、最後まで見届けました。
新海監督のこれまでの作品と違うところは、本当にあった震災を描いているところです。
被災した方も、そうでなかった方にとってもテーマとメッセージが重くて強い作品になっています。
忘れられるわけないです。あんなに怖い思いをしたのは人生で初めてでした。
ちょっと心が落ち着いた後に、また感想を書き足そうと思います。ただの感動超大作映画ではないです。心の深くて暗いところに突き刺さったままの杭みたいなものに訴えかけてきます。