「「天気の子」よりは面白かったが・・」すずめの戸締まり yoneさんの映画レビュー(感想・評価)
「天気の子」よりは面白かったが・・
新海誠監督の最新作。
観終わった感想はタイトル通り。
「天気の子」はあまりにセカイ系的な展開に感情移入できずに終わった。この作品も「Boy meets Girl」作品ではあるものの(正確には「Girl meets Boy」)、作品のテンポが早くて最後まで飽きることなく観ることはできた。
ストーリーは、古事記の天鈿女命(あまのうずめのみこと)から名前を取った主人公の鈴芽(すずめ)が、誤って扉(天岩戸)を開けてしまい、そのミスの回収のため日本中を旅して回るロードムービー的な作品。一応、旅を通して心理的な成長をしつつ(?)、話が進んでいく。最後は伏線回収して終了。
ただ、他のレビューにも書かれている通り、納得できない箇所が多すぎる。
- なぜ、すずめはあそこまで叔母さんに対して頑ななのか?
⇒ 母親の記憶より、叔母さんとの記憶の方が多いはずだよな・・なぜ今だにあんなにギクシャクしてて、あそこまで頑なに避けようとするのか?ただの反抗期?
- なぜ、すずめは扉が開けられるのか?
⇒ まさか誰でも開けられる設定なのか、あの扉?
- ダイジンの行動原理がわからない
⇒ 神様だから気まぐれ、って設定だけでは押し切れないだろう・・最後まで本当によくわからんかった
- ダイジンがSNSで見つかりすぎ
- ロードムービーにしてはお金の心配がなさすぎ
- 叔母さんが御茶ノ水駅ですずめと偶然出会うとかありえん
- サダイジンは東京の要石だったはず。ダイジンはすずめが引き抜いたんだが、なぜ、サダイジンの要石は自然と抜かれたんだ?
- で、なんで、サダイジンは叔母さんに取り憑いてる?
- 叔母さんとの和解が早すぎ
- 3.11を扱っているが、自然災害とみみずの起こした地震の区別が付かない。3.11もみみずが起こしたって設定なのか?
⇒ その設定だと、3.11も閉じ師が防げることになってしまうが。。
- 常世(とこよ)の設定が雑
⇒ なぜ1度しか行けないのか?過去行ったときと同じ扉ならまた行けるのもよくわからん。。
- なぜ、4歳のすずめは常世に行けたのか?
これは色々と詰め込みすぎた結果なんだろうな・・劇場でもらった「新海誠本」にも書いてあったけど、最初から描きたい「テーマ」が決まってたみたいだから、ストーリーや設定の辻褄合わせが出来なくなったんだろうね。
大枠のストーリーとして、すずめが草太(そうた)に一目惚れするのは、まぁ、一目惚れってのはそんなモノだから良いだろう。恋愛要素は新海作品には必須だし。その人のためなら死んでも良いと思えるかどうかはキャラ次第。だいぶ無理はあるけど。
しかし、現実の3.11を扱う必要があったんだろうか?とは思う。
2011年に起こった3.11だが、すずめは当時4歳という設定。で、今高校2年生の17歳だから13年前ってことになる。2022年公開作品では年が合わなくなる。現実とリンクさせることで、変な齟齬が生じてしまっている。
地震をみみずという妖怪っぽいモノの仕業とするのはフィクションだから良い。閉じ師という仕事が成立している世界設定だし。ただし、この世界設定だと、全ての地震はみみずの仕業=閉じ師が解決できる、となっていないとおかしい。自然発生の地震もあるし、みみずが原因の地震もある、とかだと、そもそも閉じ師は必要なくなる。被災者にとってはどちらも同じなので。その設定の甘さに、現実の3.11を変な形でリンクさせてしまっている。それがどうしても気になってしまった。
(3.11を扱うことに対して異論はない。表現者が時代に影響受けるのは当然だし。ただ、「ちゃんと扱ってますよ」というアナウンスは必要。見たくない人はいるだろうから)
あと、変にジブリっぽいのも気になった。
最後のエンドロールなんか、絵のタッチも含めて、まんまトトロのエンドロールだったし。スタジオジブリは制作部門が閉鎖されてアニメーターが別スタジオに行っただろうから、新海監督の元に集まったんだろうか?森や林の自然タッチもジブリっぽかった。けど、新海作品にジブリ要素は求めてないんだよな・・。宮崎駿監督の代わりは誰にもできない。庵野監督や神山健治監督のように、もっと独自路線(オリジナリティ)を貫いてもらいたい。
最後に、自分はRADWINPSは好きなんだけど、流石に毎回同じだと飽きてくるな。。
次回作は別のアーティストにしたり、歌の使い方にしてくれると、もっと作品を楽しめると思う。
色々書いたけど、それでも「天気の子」よりは面白かったので3.5点。
0.5点は芹澤が押し上げてくれた点だと思う(笑)。