「色々と「気取っている」」すずめの戸締まり ユッケさんの映画レビュー(感想・評価)
色々と「気取っている」
色んな意味で待ち遠しかった新海誠監督の新作映画。
『君の名は。』は、独特な美術が鮮烈で、色々と気になる粗もあったけど楽しい作品でした。
『天気の子』は、前作ほど伸び伸びとは作れていない気がして、攻めの表現にも気負いのようなものを感じた作品でした。
今作は・・・これまたスケールはデカいんだけど、なんだか深みを感じられなくて、素敵な映画体験とはなりませんでした。
とにかくこの映画は色々と「気取っている」。
そこが個人的にダメデした。
鈴芽と草太の「出会い方」からして、もう気取っています。
「新海誠監督作品」だったから仕方ないですけど、イマドキちょっと見ていて恥ずかしいです、あんなベタなパターン・・・
更に、すれ違った鈴芽を振り返りもせず「ねぇ」から始まり、「この辺に廃墟はない?」と尋ねる草太。
人に道や場所を尋ねるときにあんな気取った声と態度の人、見たことがありません。
(草太の喋り方は、なんだか『ガンダム』シリーズの主人公みたいだし)
一方、鈴芽ですが、正直「面白みに欠けるキャラクター」で、劇中ではスクリーン狭しと動き回っていますが、最後まで好きになれませんでした。
「ヒロイン」し過ぎていて、人間的に好きになる要素がほとんど無かったです。
(椅子に惚れたりキスしたりしても、描写が弱かったからか、加点にはなりませんでした)
細かいところに気が利くとか、人より几帳面とか(逆に大雑把とか)、さりげない仕草に女の子らしさがあってドキっとするとか・・・
・・・なかったなぁ~、そういうの。
観客向けに「親切な独り言」を口にしたり、観客を楽しませるために大袈裟なリアクションをとったり、相変わらず片思いの相手の名前を連呼したり・・・
そんなのばっかりだった印象です。
これでは「作品の奴隷」です。
※テーマの割にコミカルなシーンが多かった本作ですが、残念ながら一度も笑えませんでした。
(笑わそうとしていることだけは分かりました)
別に「○○あるある」とかをやって欲しいわけではなくて、新海監督が日常で「素敵」だと思ったことを作品の中に織り込んでさえくれれば、スクリーンを通して「新海誠監督に見えている景色」というものが体感できるのではないか、ということが言いたいのです。
(なんでもかんでもリアルを追求するのも違うと思いますし)
新海監督には「ミミズが見えている」のであれば話は別です。
【追記】
「ジブリっぽい」「エヴァっぽい」など、色々言われていますが、個人的に「~ぽい」と思ったのは、クライマックスで鈴芽が子供時代の鈴芽を元気づけるところ。
「なんか『ドラクエV』で観たなコレ・・・」と思ってしまいました。