「共感からかけ離れている」すずめの戸締まり 大五郎さんの映画レビュー(感想・評価)
共感からかけ離れている
泣ける!という前評判をみてハンカチを用意して観にいったのですが、どこでなけるのか全く分かりませんでした。
映画前にやっていたほしぐまのおじいちゃんとカメラのアニメーションの方が俄然うるっときました。
これは、みんなの行動原理に共感できずなんで?の気持ちの方が勝ってしまったからだと思います
まず鈴芽。
主人公の鈴芽の心情が1番共感できません。
なぜすれ違っただけの人にあんなに心奪われてしまったのか、3日程度過ごしただけの人のためにあんな危険を犯すのか、自分が変わりに死のうとまでするのか
さっぱり共感できません。
常に草太さん……!!!草太さん…!!!!!となるのが謎で仕方なかったです。
ふたりのやり取りがもっと深いものがあれば、納得もしたでしょうが、あの映像ではわかりませんでした。
3分にも満たない短さのほしぐまでうるっと来るのは子供とおじいちゃんという関係が説明しなくても親密であることが想像できるからです。
なんの関係性もない2人にはそれなりの理由がないと親密さを理解することはできません。
次にダイジン。
ダイジンは行動も正体も謎です。
実は…!的な展開もありません。なぜ鈴芽が好きなのか、草太を邪魔と言い放って自分の代わりにしたのか、まぁわかるといえば分かるけど納得はできません。
邪悪な一面をみせたかと思えば鈴芽に嫌われてしまったら弱々しい姿にもどり、鈴芽が草太の代わりになろうとすれば自分がまた石にもどる。なんかモヤモヤするんですよね。
草太は行動原理というかキャラクターが掴めません。
ロン毛・泣きぼくろ、突然自転車にのってる女子高生に話しかけるところからミステリアスでちょっとチャラさもあるハウルのような人かと思えば、全然そんなことはなくどちらかと言うとちょっと固く真面目な性格っぽい感じ。でも常に大袈裟な声優の演技も相まってクールな感じはなく、しかしツッコミのときも一貫して「すずめさん」呼びの固さもある。
なんか一貫性がなく、これも鈴芽が恋に落ちたのが分からない所以でもありました。
あの見た目ならチャラミステリアス系統でよかったんじゃないか…?
ダイジン、サダイジンの正体しかり謎が明かされなかったのもモヤモヤしますが、それぞれの関係性とキャラクターがいまいち掴めないのが共感出来なかった要因かなと思います。
また、天気の子や、今作の前半部分にある大好きな人の命VSその他大勢の命は大好きな人の命が勝ってしまっても仕方ないと思えるのですが(今作では大勢の命を優先しましたが)
草太が石になるのは嫌なのに、ダイジンが石から解放されたかった気持ちには全く寄り添わず、ダイジンが石に戻るのは良しとする流れが死ぬほどモヤモヤしました。
あと、新海さんといえば主人公のポエム語りだと思っていて
あの感じが好きだったので今回全くなかったのが悲しかったです。