「驚くほど何もなかった。」すずめの戸締まり jsさんの映画レビュー(感想・評価)
驚くほど何もなかった。
クリックして本文を読む
新海誠の真骨頂と言えば、アニメでしかなし得ない映像の魅力なのだろう。この映画は映像的な魅力で描いたシーンが連続しているだけだ。ドラマを語ることをついに放棄したかと感じる。ある意味正しい選択なのかも知れない。しかし、日本文化に親しんだ皆に分かりやすい共通理解と同義であるが、竜のように描かれる地震のエネルギーなど、想像し得るイメージを超える新鮮味やオリジナリティは乏しい。映像の魅力のみを追求したであろう作品で映像の魅力が足りない。
そしてドラマ性の欠如は明らかで、鈴芽がいつどのように草太を「居ない世界が怖い」とまで言うほどに好きになったのかまるで描かれないし(好きであるという状況が必要だったということだろう)、要石とか閉じ師がどういう設定なのかも明らかでない。そういうものだということに終始し、謎解きも求められていないのだろう。封印のようなことを成し得たのも、なんだか頑張ったからという以上のことは読み取れない。モチベーションがよくわからない中で感情で物事が動く、日本映画の悪癖である。
また、ロードムービーでもある訳だが、この魅力的な形式には大きな危険がある。移動と一体となって展開するドラマこそロードムービーであるが、旅路を進んでさえいればドラマが動いていなくて動いているかのように感じられてしまう。途上で出会った人たちはどんな存在だったのか?物語の初めと終わりで何が変わったのか?
境界の表現は「君の名は。」より意味を持って描かれたと思いますが、あんなに気に入らなかった「君の名は。」がそれなりに見どころあるものに思えてくる一本でした。
コメントする