「一言でいうなら「浅い」」すずめの戸締まり よふかしさんの映画レビュー(感想・評価)
一言でいうなら「浅い」
公開初日に見に行き、気持ちが落ち着いたのでレビューを書きます。
音楽と画作りに関しては素晴らしいと思います。
一方で脚本は「雲のむこう、約束の場所」を思い出す酷さでした。
ネガティブな評価をしている人が深く語ってくださっているので、ポイントを絞って語ります。
主に浅いと感じたのは、
・すずめを中心とした人物の感情描写、感情の動き
・命と向き合うということ
の2点です。
この映画は最初から最後まで主人公と同じ気持ち、テンションになれるシーンがありません。
出会ったばかり(実際はそうではないのですが)の男への執着も、叔母さんへの想いもこちらがその感情についていけるようなシーンもありません。
詰まるところ、「このキャラクターのこと応援したいな、好きだな」と思えないのです。
その一方で道行く人との触れ合いを冗長に演出されるのですが、これもこれで「そこに生きる人」のようなものを描きたいのはわかりますが単調な描写です。
例えば出会った人、優しくしてくれた人の場所が「ミミズ」によって破壊されてしまったり、死を目の当たりにすることで成長をするなどがあれば「命」を強く感じたと思います。
主人公のバックグラウンドをふんわり描いてしまったこと、直接的な描写を避けすぎてインパクトがないことが挙げられます。
命と向き合うからこそ、「100万人の命」と「愛する人」の天秤に価値があると私は思います。
物語を通して全てが「浅く」感じられ、軽薄な内容に思います。
天気の子で、帆高は「あの時僕は、僕たちは、確かに世界を変えたんだ。僕は選んだんだ、あの人を。この世界をここで生きていくことを」と自分が愛する人を選んだことで世界を変えてしまったことを再認識し背負います。
すずめには助けられなかった人、そして自分をしっかり見つめ直して、
その上で愛する人を天秤に掛け、それでもやっぱり愛する人を助けたいと決意する作品であってほしかったです。
そして3.11というテーマ性の重要性はわかりますが、大前提としてエンタメは「面白い」上でテーマを掲げるべきだと私は思います。
つまらない作品は、テーマを語る土俵にいません。