「新海誠ワールド」すずめの戸締まり キレンジャーさんの映画レビュー(感想・評価)
新海誠ワールド
まず、入場者特典の冊子にビックリ。
簡単なチラシ程度の内容かと思ったら、企画書の画像、監督のインタビュー、主要キャストとの鼎談、とかなりの充実度とボリューム。
冒頭映像など配信されていたがあえて観ず、ほとんど予習もなく来たが、上映前にこれをパラパラと眺めて、初めてこの映画がある出来事をモチーフにしていることを知った。
それ自体は私とってある意味「ネタバレ」でもあったが、冒頭の映像を観た人なら想起されるコトではあろうし、あまり気になることでもないのだが、それとは別に、私はあの出来事をネタにするのは、言葉を選ばず言うと「卑怯」な気もしている。
それは、あの出来事で被害を受けた方々が今も依然として生活されていて、それを当時多くの日本人がリアルタイムで大きなショックを受けながら注視していた事件だったから。
正直、私はあの現場の映像は今でも苦手にしている。
私が「卑怯」だというのは、「作品を作るな」という意味ではなく、「どうしたって泣いてしまう」からだ。
前置きばかり長くなってしまった。
(ここから少しだけネタバレっぽい内容も含みます)
まずは相変わらず…いや、さらにクオリティの上がった映像美。自然物はもちろん、光や水といった無機質なモノを美しく描かせたらやはりトップクラスだと思う。
そして、CGで背景が自由に動かせるお陰で、カメラの動きでこれまでに見たことのないようなシーンがたくさんあった。
そして今回は「人」の描き方もこれまでより踏み込んでいた気がする。
とは言え、やはり新海誠作品テイストは健在なので、彼の作風が好きならハマるだろうし、そうでなければピンと来ない人も多いだろう。
本質的なところでよく解らないところもあるし。
でも私は、これまでの劇場作品3作の中では一番好きだなぁ、という感想。
ラストシーンとパーキングエリアでのシーン(この辺りはむしろ大人達の「人を救うことって綺麗事じゃない」という叫びに近い)で都合2回の涙、でした。
ま、その辺りは私自身の更なる老いと、最近仕事で大きく削られたメンタルのせいなのかも知れませんが。
この映像を楽しむなら、劇場以外はあり得ません。
よろしく。