「ノンフィクション・ラブコメアドベンチャー 幻の都市の財宝」ザ・ロストシティ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ノンフィクション・ラブコメアドベンチャー 幻の都市の財宝
大アドベンチャーとまでは行かなくとも、気軽なアドベンチャーがしたい。ラブコメ込みで。
そんな人にオススメ。
女性考古学者と男性冒険家の恋と冒険で人気のシリーズ小説。
著者のロレッタは夫を亡くして以来、スランプ気味。
出版社による新刊の宣伝ツアーに嫌々駆り出され、ゲストとして登場した小説の表紙モデルのアランと相性が合わず、失態を見せる。
そんな彼女の前に現れた青年大富豪フェアファックス。小説の中に出てくる“ロストシティ(幻の都市)”と財宝“炎の王冠”を信じ、ロレッタを拉致して探し出そうとする。
アランもロレッタを救出する為、秘境へ…。
大抵秘境へ冒険に向かうのは、男ならタフなヒーロータイプで、女性も男勝り。
ところがどっこい本作は、引きこもりの小説家と能ナシのモデル。
冒険小説の著者と表紙モデルが本当の冒険へ。
なので、冒険はトラブルやアクシデントの連続。ヒルにギャーギャー悲鳴。アランが。
史上最も頼りないアドベンチャー…?
本格アドベンチャーを期待すると物足りない。
アクション、大冒険、お宝探し、謎解き、手に汗握るハラハラドキドキ…何もかも薄味。
『アフリカの女王』や『ロマンシング・ストーン』などロマンチック×アドベンチャーの名作群には遠く及ばない。
それでも楽しく見れるのは、たっぷりのコメディ要素と豪華キャストの魅力。
アクションもコメディもラブもお手の物。
タフな役が十八番だが、ズッコケ役も巧い。
冒険に似つかわしくないキラキラド派手服だって(ユーモラスに)着こなしちゃう。
サンドラ・ブロックの為に当て書きされたような役を快演。
甘いマスクのマッチョでアメリカのティーンの理想の恋人。服を破って肉体美もサービス。
こちらもチャニング・テイタムのイメージに一見ぴったりな役に思えるが、実際は軽薄で頼りにならないウザ男って役なのが今回のミソ。
ヒーロータイプのテイタムに真逆の役柄設定で配したのがユニーク。
劇中のロレッタとアランの相性は最悪だが、サンドラとテイタムの相性は抜群。
軽快で絶妙なやり取り、掛け合い。反目し合っていたのが徐々に距離を縮め、次第に芽生えるロマンス。
サンドラとテイタムは一回り以上歳が離れているが、それを感じさせないナイスカップルさはやはり二人の魅力。
魔法学校を卒業してからは個性的な役を好んで演じるダニエル・ラドクリフ。低姿勢の紳士も最初の内、たっぷりの髭面で何処か胡散臭く、次第に高慢で発狂していく。なかなかハマっている。
僅かな出演シーンながら“爆イケ”のブラッド・ピット。ワイルドさとアクション披露するも、彼がずっと大活躍する訳ではないのでお間違いのないよう。『ブレット・トレイン』にサンドラが出演してくれた事への“恩返し出演”。
ロレッタの出版担当者のベスも笑いを提供してくれる。
キャストが楽しそうに演じているので見てるこちらも楽しくなってくる。
小説の中の幻の都市と財宝を本当に探し出そうとするなんて、現実と空想の区別も付かないおバカなボンボン…と思いきや、
亡くなった考古学者であった夫との研究でロレッタ自身も考古学に詳しく、“ロストシティ”と“炎の王冠”もまんざら空想の産物ではない。
アドベンチャー映画には必須アイテムの古ぼけた羊皮紙の一部を頼りに、示す在りかに近付いていく。
遂に見つけた場所。財宝。それは…。
一応アドベンチャー映画の定石は踏まえている。
フィクションの冒険がノンフィクションの冒険になるユニークな構成。
二人の関係。ヒロインの再起。“新たな物語”。
冒険とユーモアとロマンスを詰め込んだ王道ハリウッド・エンタメではあるが、先にも述べた通り本格アドベンチャーとしての物足りなさ、ハラハラスリルのアクション、ストーリー性にも乏しい。
気軽な楽しさとキャストの魅力。
それを堪能出来れば、めでたしめでたし。