サバカン SABAKANのレビュー・感想・評価
全56件中、41~56件目を表示
なかなか終わらない「またねー」の往復👍
話は昭和後半の長崎。2人の少年が夏休みに旅をしながら、成長して友情を深めていくロードムービー的な作品。早朝から日暮れまで子供だけで出掛ける。今の子供にはさせないでしょうが、当時は当たり前でした。子供の頃の1日は長かったことをしみじみ思い出す。
2人の少年、久田と竹本のイルカを見に行くというだけの全く無計画な旅。自分もこんなことやってきたなあと懐かしむ。案の定トラブル連続の旅だが、貧乏でクラスで笑い物の竹本が根性があり、久田を引っ張っていく。離島に浮き輪なしで泳いでいくなんて、やっぱり昭和だな。
旅の途中で出会う女子高生にほっぺを赤くするような感じ、その気持ち分かる分かる。でもおっぱい見過ぎ😂でもそれも分かる分かる❗️
なんとか家に帰ってきた2人。大冒険をクリアして完全に親友になった感じも良い。別れ際の「またねー」の繰り返し。このシーンはニヤニヤ。よくやったなあ自分も。あれいつ終わりにするか分からないから続いちゃうんだよなあ。何百メートル先、見えなくなるまで。でも、竹本の転校で本当の別れ際の「またねー」にはぐっとくるものがありました。少年時代に帰ったような心温まる作品でした。2人の少年を演じた番家くんと原田くんは演技経験が無いそうですが、仕上がった子役よりもリアルで良かった(でも演技お上手でしたよ)。久田の両親役の尾野真千子さん、竹原ピストルも昭和の父ちゃん母ちゃんを上手く演じてました。さすが、竹原ピストルは歌が上手い。草彅剛の出番は最初と最後10分もないが、彼のぼくとつなナレーションは好きです。こういう映画最近なかったので観れて良かったです。エンドロール最後まで見てねー。見てねー。見てねー。
サバカンとは?エンドロール後も含めて完成する映画です。
1986年のある夏の日から今に至る二人の少年の物語。いじめられていて貧乏な家だけど母親と4人姉妹の長男として家族楽しく暮らしている友達。亡き父が作ってくれたサバ缶をネタに握った寿司を美味いからと主人公の少年に食べさすのだが、後に大人になり、板前となったその友達に語られるように、大人になった客に出しても決してうまいものではない。しかし主人公もこの寿司を「うまい、うまい」と言って頬張る
「尊敬していた父親が作ってくれたから、、、。」このことから分かるのが、サバカンは親子の関係性、外から見ていると分からない、本人同士だけ理解し合える関係の象徴なのかなぁと。だからこれは他の世界では分からない味がするのだ。そこで思い出されるのが、主人公が冒頭で読まれる父への作文、何かと叩き合う家族、そこからもこちらも形は違えど本音を言いあえるいい親に育てられているのは理解できる。ちゃんと愛されて育った子供たち。
こういう思いを共有しているひとたちのお話。
その比較対象、理解できない人たちとして
主人公と友達の価値観が分からないいじめっこ達。
子供というだけで、ピンクだから女の子という判断をする不良の若者。人を見ると全て万引き犯と決めつける駄菓子屋の夫婦。が登場しなさますが、それくらいであとは基本みんないい人ばかりが数多く登場する。
地元の不良を一蹴し、友達にだけ「負けるなよ」と帽子をくれた地元で一目置かれるお兄ちゃん。「サザエを焼いてくれる、ちょっと色っぽいその彼女」「みかん畑の天敵ジジイ、スーパーの半額店員、お土産をくれる、家族の姪っ子、褒める先生、抱きしめてくれる主人公の両親。カップケーキを買って帰り、友達の行動をずっとからの立場になって考える友達の母。いざとなると引き取りに来る親戚。そして「トムソーヤの冒険」のハックみたいな友達。
そしてその友達からパワーワードが連発する。
「お前だけ俺の家を見て笑わなかったから」「走ると決めろ!」「文を書く人になれ」「お前はすぐ諦めるからな」そんな印象的な言葉が見ているこちらの心に突き刺さり、主人公の背中を押す。子供の頃のこういう友達や他人のひと言って何十年経った今でも残っているもの。そんな風に友達は主人公よりちょっとだけ大人だから、まだまだ子供の主人公は、友達の「自分はトモダチだと思ってるけど、、、」という相手を気遣っている発言についての考えが理解できない。
そして、物語はひと夏の想い出がその後もらずっと続いていく。
大人になった主人公は
「そういえば、幼馴染で友達いたなぁ。」って水族館のイルカを見て思い出す。
困難はあるけれど周りには必ず優しい大人がいた。
そのことを思い出すことで大人になった主人公も家族について見つめ直してゆく。
とても好きな作品で落涙しましたが、
子供同士の会話や
もうひとつくらい旅での大きなエピソードがあってもよかったかなぁと。例えば旅から帰れなくなったとかして、主人公が警察とか大きな社会にぶち当たるとか。そういったことはないのでお話しに今ひとつ起伏がないのです。その点で言うと友達の母の死が山場と言えるのですが、ここ、もっとじっくり友達と主人公の会話が聞きたかったなぁ。
でも、そうすると「またなぁ」の活かし方が難しくなるのか、、、。(ちなみに「またなぁ」のいかにもな、伏線の貼り方は分かりやすすぎて、、、回数減らしても良いかと)
エンドロール後まで見て完成する映画ですので席は立たずに。
みかんの不器用な愛情もいいけど手間暇かけた愛が詰まったサバ缶もね!
そういえば、
サバからのイルカ?そして寿司、気づいたら海洋生物だらけだ!
時代の空気感が良く描かれている
主人公が作家なこと、主人公の親友がめぐまれていない境遇なことなど、スタンド バイ ミーと重なる。ただあちらはラストで親友の死を知るけど、この作品では大人になった2人が再開するシーンがラスト。断然本作品のラストを支持する。2時間だが、もう少し子の世界にひたり
たいと思えた。あと30分長くても良い。あの女子高生は在日?軽トラの彼との関係は?など幾つかの疑問点を描けたかも。あえて語らない良さもあると思うが、もう少し長く観ていたかった。それだけ面白かった。
本年度ベスト級
子供の頭をぶっ叩いたり、きん○マポリポリだったり、コンプラギリギリを攻めた昭和の家族の日常描写のリアリティにやられ、とある少年との出会いから非日常へと誘われ、不思議な冒険を経て、(ちょっと大人になって)日常へと戻っていく。
ストーリーはいわゆる「スタンドバイ・ミー」的な王道のジュブナイル映画なのですが、とにかく子役達の表情・言葉・行動の魅力が凄まじく、後半は何故がずっと泣いていました笑
特に主演の一路君の表情には笑わされ、泣かされました。
ラストの健ちゃんとの別れのシーンで号泣する久田を背中から撮っていたのも悶絶。「子供は背中だ!」と子役の演出論を語っていた是枝裕和監督の言葉を思い出す。
ここまで散々久田の色んな表情を見せてくれたのに!1番感情を爆発させているその顔を見せてくれないのかぁ!!とこっちが号泣(笑)
草彅剛さんのYouTubeチャンネルで金沢監督が出演された際に、元は金沢監督のmixiでの日記が発端で、そこから草彅さんのラジオドラマになり(企画はなくなってしまいますが)、色々あって映画化になったそう。
最初から最後まで草彅さんに朗読してもらうことにこだわり、子役もオーディションで演技力ではなく、監督が好きになった子を選び、ストーリーも監督の半自伝的のようなお話で、全て監督の好きが詰まった作品。
やはり魅力のある作品はこういう映画なのかな。
ただ一点、ラストの現代の主人公の帰郷+健ちゃんとの再会シーンはちょっと蛇足だったかな〜。と感じる。
全く健ちゃんを描かないか、主人公がふらっと立ち寄った寿司屋で出て来たのがサバカン寿司だったみたいな健ちゃんとの再会は匂わせくらいにしとくのが良かったかな〜と個人的に思った。ただの個人の好みですが!笑
監督の半自伝的な映画は最近だとケネス・ブラナー監督の「ベルファスト」、後はアカデミー外国語映画賞を取ったアルフォンソ・キュアロン監督の「ROMA」などがありました。
日本では本作「サバカン SABAKAN」!ってくらいやられた。夏休みシーズンの今見れて良かった。
リアル少年時代
良くも悪くも小学校の映画鑑賞会で観た映画のようでした。
(肯定的な意味で)
どこまでが監督の実体験なのか知らないですが
やっぱり誰かが亡くならないと
邦画のストーリーって動かないもんなんですかね
草薙のフラットな演技も
子役二人と尾野とピストルの夫婦役も最高でした
が
ピストルの鼻唄シーン
急にピストル過ぎて
?でした。
ダメな父さんが
ピストルにしか見えなくなってしまった。。。
一夏の、そして一生の
80年代の少年たちの友情物語。
クラスでいつも同じ服を着てきてる少年と夏休みに起こる何ともいえぬ時間の共有とたわいもない会話、その家族、そしてすれ違い。
その全てが一夏に凝縮されてて観てるものの心に染み渡る。
また80年代を過ごした者に取っては懐かしくもあり、郷愁を煽る部分も多大に感じられた。
その中で過ごした少年たちの時間をとても楽しく観させてもらった。
最後に少年たちの親、農園の主人など80年代の大人を演じた方々がとてもその時代の雰囲気を醸し出してて良かったです。
日本ジュブナイル映画の新たな傑作
本作をジャンル分けするならば、幼少の思い出を振り返るような映画である「ジュブナイル映画」というのが一番ピッタリハマるかと思います。
このジャンルで一番有名なのは『スタンド・バイ・ミー』(1987)という古いアメリカ映画だと思いますが、今年の2月に『グッバイ、ドン・グリーズ』というジュブナイル系アニメ邦画も公開されていますので、今なお人気の高い映画ジャンルですね。
本作はそんな人気ジャンルであるジュブナイル作品の中でも、非常にクオリティの高い一作になっているように感じました。少年時代の一夏の思い出、子供たちだけの冒険、淡い恋心。ジュブナイル作品としての勘所をしっかりと押さえつつ、今までにない新しい作品に仕上がっていたように感じます。何ヵ所か思わず涙ぐんでしまう感動的なシーンもありました。
ただ、2点ほど不満点もあります。
1つ目は、草なぎさんの出演時間が非常に短かったこと。2つ目は、劇中何度も登場する下品で幼稚な下ネタの数々です。特に下ネタに関しては不快に感じるレベルで酷かったので、下ネタ苦手な人は要注意だと思います。
まぁ、以上のような不満点はありつつも、全体的に見ればクオリティが高く、非常に感動できる傑作ジュブナイル作品となっていましたので、観ていない方にはぜひご覧いただきたいですね。
・・・・・・・・・
1986年の長崎、喧嘩は多いが仲の良い家族で育った久田孝明(番家一路/草なぎ剛)と、彼のクラスメイトで貧乏故にクラスに馴染めず孤立していた竹本健次(原田琥之佑)。ある日、竹本が突然久田の家を訪ね、イルカを見るために一緒に出掛けようと誘う。何故自分が誘われたのか、理由も分からない久田であったが、彼の誘いに乗り、家族に内緒で海までの冒険に出発する。
・・・・・・・・・
私個人の話になりますが、私は東北の田舎で育ちました。なので、本作のような田舎での少年たちの物語には結構共感して感動しちゃうタイプです。本作はジュブナイルものとしてはここ数年で観た作品の中では一番面白かったように感じます。
本作のようなジュブナイル作品を語る際に、しばしば比較対象として名前が挙がる作品と言えば、スティーブンキング原作の名作『スタンド・バイ・ミー』(1986)です。アメリカを舞台に、仲良し少年4人の小さな大冒険を描いた名作として今なお語り継がれています。ただ、映画として面白いことは認めつつ、『スタンド・バイ・ミー』は現代日本では共感できないジュブナイル作品であるとも感じました。
『スタンド・バイ・ミー』、小説の原題は『The Body(死体)』であり、少年たちが仲間内で人気者になるために線路沿いに歩いて死体を探しに行くという物語です。「死体を探してヒーローになる」という動機は正直現代日本では共感できない人も多いと思いますし、私個人としてもそこが引っ掛かってしまいイマイチ映画にノレませんでした。
しかし『サバカン』において、少年たちの行動原理となっている「イルカを見たい」と言う願望は、現代日本でも理解できる理由です。映画ジャンルが似ていることもあり『スタンド・バイ・ミー』との共通点は当然多くありますが、どれも日本的なアップデートがしっかりされていてことで、鑑賞のノイズになるような違和感はなかったように感じます。
ところどころのコメディシーンも非常に面白かったと思います。私はコメディの好き嫌いが激しいんですが、本作のコメディシーンは笑えました。笑いを誘うコメディシーンが何ヵ所かあったんですが、劇場内でも笑いが起こっていて、私も思わずクスクスと笑ってしまいました。
全体的には楽しめたんですが、先述の通り不満点もあります。
1つ目は非常に楽しみにしていたのに草なぎさんの出演時間が非常に短かったことです。上映時間の9割が幼少時代の回想シーンだったので、草なぎさんのトータルの出演時間は5分あるかないでした。、『ミッドナイトスワン』を観て以来すっかり草なぎ剛のファンになっていた私は、草なぎさんがメインキャストだと信じて期待していたので、ちょっと肩透かしを食らった気分です。
2つ目は、劇中何度も登場する、下品で幼稚な下ネタの数々です。小学生である主人公が幼稚な下ネタでゲラゲラ笑うくらいならまだ可愛げがありますが、竹原ピストルさん演じる主人公の父親であったり、ブーメラン島への道中で出会うヤンキーであったり、良い歳の大人ですらそういう下ネタを連呼するのはどうも違和感がありました。正直観ていて居心地が悪かったですね。下ネタ苦手な方はご注意ください。
ただ、上記のような不満点を込みしても、観て良かったと思える素晴らしい映画でしたので、ぜひ多くの方にご覧いただきたいですね。オススメです!
大人の頭の中の子ども像
長崎を舞台にスタンドバイミーを撮りたかったのだろうと思いますが、登場人物全員が記号的(あるいは機能的)過ぎて実在感が無く、薄っぺらく感じました。子役の撮り方も「こちらあみ子」の方が断然良かったと思います。なお、尾野真知子と竹原ピストルは夫婦役として最高でした。
説明できない涙
エンドロールの途中で岸壁に書かれた落書きをお姉ちゃんが見つける。そこでこみ上げてきたものは一体何の涙なのか自分で説明できない。いい映画を見せてもらった。
邦画は洋画に比べて映像の平均点が低いと思っているが、本作は撮影、特に移動撮影が秀逸だった。軽トラに乗せてもらって海から帰るところ、前述のエンドロール、自転車ナド。
時代背景はマタゾウより一回り若い世代だが、描かれる場面はワタシのそれと非常に近く、個人的には斉藤由貴や当時の時代風俗ネタをもう少し掘ってほしかったカモ。
役者では竹原ピストル良かったなあ。あと草なぎ剛、全くこの人の演技にはいつも惚れ惚れさせらせる。その人にしか見えない。貫地谷しほり、お母さん役の年代なんだなあ。その明るさが、かなしい。赤信号のフラグが、まさか本当に…。
ラストシーン、竹本の顔を出さなかったのは正解だ。ディテイルまでしっかりした良作でした。
【良かった点】 長崎の綺麗な空、海、そして80年代の空気感。全てが...
【良かった点】
長崎の綺麗な空、海、そして80年代の空気感。全てがスクリーンから伝わってきた。文句を言い合いながらの家族団欒、一夏の親友との大冒険、田舎で子ども時代を過ごした自分にとって、忘れかけていた大切な宝物のような思い出が引っ張りだされた。後半は王道ではあるが涙が止まらない。エモーショナルな雰囲気に包まれた傑作。
【良くなかった点】
文句なし、個人的には手放しでおすすめしたい作品。
子役達の演技が光る、子ども時代の思い出
子役達が良かったです!
子どもの頃の思い出の映画なんだろうな、と分かってはいましたが、それでも展開に引き込まれました。
シンプルに最後のほうは泣きそうになったし、エンドロール後もおまけ映像があって良かったです。
途中、海の近くで描いた絵は何かな~と思っていたら、最後の最後で見せてくれました。この演出も良かったです。
子ども時代を懐かしく思う大人世代にほっこりと見てほしい、そんな映画でした。
いい友だち!
サバカンは、いつ出てくるのか待っていたら「サバカン寿司」でした。
ブーメラン島でのイルカは、会えなくて残念でした。いいお兄さんとお姉さんに手助けされました。ラストのイルカと遊んでいる絵は素敵です。
健二が、寿司屋 になって「サバカン寿司」出してるのは面白かったです。
ファンタジー感が溢れる少年の日の思い出
一足はやく「完成披露&舞台挨拶生中継付き先行上映」に行って来ました。
どうしても日本版「スタンド・バイ・ミー」のように感じてしまうと言ったらアレだけど、あの映画からインスパイアされたのは間違いないだろうなぁ。草彅剛がR・ドレイファスという役どころですね。
彼らの目的は「死体」ではなく「イルカ」を探しにいくのだが、噂の実態は、溺れそうな所を助けてくれた女の子が「ルカ」で「イルカ」とは彼女の事だったという勘違いでいいのかな。
あの女の子とヤンキーのリーダーが恋仲だったのが意外だったけど、あの二人がいなかったら結構な事件になっていたかも。でもあの二人は何だったのだろう。
気になったのは、最後にお母さんが交通事故で亡くなってしまう展開は果たして必要だったのかなぁ。何か借金がかさんで子供を親戚に預けて…くらいで良かったような気もする。
尾野真知子と竹原ピストルが振り切った演技で良かったが、なんと言っても少年役の番家一路と原田琥之佑が素晴らしかった。
P.S.お約束なので一応書いておくかな「金沢監督天才!」
【”あの一夏の友情と冒険を僕は一生忘れない・・。”1980年代、二人の少年の友情と、彼らを厳しくも優しく見守る大人たちの姿が素晴しき作品。夏休み、ロードムービー、海・・。期待に違わぬ作品である。】
ー 今作は、夏休み、ロードムービー、少年達の友情・・、という名画の要素を総て入れ込んでいるが、期待に違わない作品である。-
■1986年、長崎の漁村が舞台。
家が貧しいが故に、クラスから浮いている少し変わった小学5年生の竹田(原田琥之佑)はいつも、独りきり。けれども、彼は媚びる事無く自分独自の正義感を保った世界の中で生きている。
同級生の久田(番家一路)は、良く喧嘩をするが、子供を想う、愛情深い両親(尾野真千子、竹原ピストル)と弟と共に暮らしていた。
そんなある日、久田の家に、竹本がやってきて・・。
◆感想
・ナレーションと大人になった売れない作家を、草彅剛さんが演じているが、この作品に余韻を与えている大きな要因は、草彅さんの穏やかで落ち着いた優しい声のナレーションであると思う。
・又、久田の両親を演じた尾野真千子、竹原ピストルの近頃観たことが無いような、掛け合い漫才の様な夫婦喧嘩のシーンも良い。
ー 今時、奥さんが”金●”とか、旦那さんに喧嘩の際に言うかなあ・・。けれども、何故だかほんのりするとともに、久田家の健全性が良く分かる。尾野道子さんが、昭和のお母さんを見事に演じているし、竹原ピストルさんのタジタジになりながらも、何とか夫としての面子を保とうとする姿も可笑しい。-
・そんな日々が続くが、学校は夏休みに・・。ある日、フラリと久田の所にやって来た竹田はぶっきらぼうに”イルカを見にブーメラン島に行くぞ!”と言って去る。
翌日、早朝5時にピンクのママチャリで出かけようとする二人。だが、そこに久田の父が現れて・・。
ー 普通は、止めるよね。けれど、久田の父(竹原ピストル)は、”ちょっと待て”と家に駆け込み、荷台に座布団を括りつけ“これなら尻が痛くならんだろう”と言い、竹田のポケットに札を強引に入れ、”途中で、ジュースでも飲め”と言って二人を送り出す。
何気ないシーンだが、竹田の父の善性を感じながら、観ている側は”これから少年たちの夏の冒険が始まる!”とワクワクしてしまう。-
・久田と、竹田は急坂で自転車を壊してしまったり、ヤンキーに絡まれたり、散々な目に遭いながら、漸くブーメラン島が見える浜まで、到着する。
そして、ブーメラン島まで泳いでいくも、直前に久田は足が攣って、溺れかけてしまう。そこに颯爽と現れた女性(芽島みずき)が海中に潜り彼を助ける。因みに彼女の兄(八村倫太郎)は、ヤンキーに絡まれた二人を、颯爽と現れ助けている。
ー 脳内で、颯爽兄妹と勝手に命名する。二人は子供たちの"正義の味方"の象徴であろう。-
・結局、二人はイルカには会えないが、元の浜に戻り颯爽お姉さんが焼いてくれた貝を頬張る。そして、二人は何かを護岸に”の”何か”を書いてから”颯爽兄妹”の軽トラに乗せて貰い、家に帰る。
・その後も、二人の交流は続き、海山の事なら何でも知っている竹田の豊富な知識に驚きながら、久田は急速に彼に惹かれていく。
ー この辺りの描き方も良い。ミカン畑を営む、竹田の天敵、”内田のじじい”(岩松了)と、竹田の追っかけっこをする姿がオカシイ。-
・そんなある日、竹田は久田が鮨が好きだがお金が無くて食べられない事を知って、彼を貧しき家に誘う。そこで、彼が久田に振舞ったのが、サバの味噌煮を海苔で巻いたサバ寿司である。美味さに驚く久田。
ー 竹田の鮨飯を握る巧さが、亡き父親譲りであることが、サラリと語られる。旨い。大人になった彼の職業も、暗喩している。-
・スーパーで働く、竹田の母(貫地谷しほり)が、久田と会った際に言った言葉とその言葉に敏感に反応する久田の姿の描き方が秀逸である。
”何時までも、お友達でいてね。あの子、余り友達がいなかったから・・。そういえば、あの子に怒られちゃったの。貴方の事を友達と読んだら、久田が、俺の事を友達と思っているか分からないんだから、友達って呼ぶなってね・・。”
ー その言葉を聞き、寂しさと少しの怒りを感じる久田が、石ころを蹴る姿。-
■今作の白眉のシーン幾つか。
・久田が、竹田に”何で僕を誘ったの?”と聞いた時に、竹田が珍しくはにかんだ様に答えた言葉。”貧乏って言わなかったから・・”
・ラストシーン、海岸の護岸に二人が書いたイルカに乗った少年の石で書いた絵を映し出すシーン。
・竹田の母が、交通事故で急逝し、子供達がバラバラに親戚たちに貰われていくシーン。竹田も親戚のおじさんに引き取られることになり、二人で田舎の駅で電車を待つ所に、息を切らしながらやってきた久田。彼が持ってきた袋の中には、サバ缶が沢山入っている。
天敵であった筈の”内田のじじい”も袋に沢山のミカンを持ってやって来る。
そして、電車がやってきた時に久田が竹田に何度も言った言葉。
”僕らは、友達だよね。又ね!”
それまで、久田に嫌われてしまったと思っていた竹田も嬉しそうに答える。”又ね!”
ー このシーンは、沁みた。分かってはいたが、沁みたなあ。そして、彼らは年を重ねても友人であることが、大人になった久田の言葉から分かるのである。ー
<今作は、1980年代の”斎藤由貴のポスター”や”キン肉マン消しゴム”を時代を表すアイテムとして、さりげなく映し出しながら、二人の少年の一夏の友情と冒険を描き出した、物語である。
今作を初監督し、オリジナル脚本も書き下ろした金沢監督の今後の活躍を期待したい。>
■舞台挨拶の時に思った事。
・尾野真千子さんが言った言葉。”子供は、只抱きしめれば良いんですよ。”
小さな子を持つ親である皆が、この言葉を実践したら、素晴らしいと思う。
・かなり大きくなった(様に見えた。撮影は昨年の秋だったそうである。)原田琥之佑君がコロナに罹患して登壇出来なかった番家一路君のパネルの横で、キチンとした受け答えをしていた姿は、立派だったなあ。
オンライン試写会で鑑賞
サバカン宣伝部員です!!自信を持ってオススメ出来ます。草彅剛さんのファンですが、贔屓目じゃなくても素晴らしいナレーションといつもの安定の演技です。監督さんも初監督とは思えません。
夏休み、ご家族にオススメの映画です。長崎県にも旅行に行きたくなります。
全56件中、41~56件目を表示