「昭和ノスタルジーに安心して身を委ねられる至福時間」サバカン SABAKAN ぽんぱるさんの映画レビュー(感想・評価)
昭和ノスタルジーに安心して身を委ねられる至福時間
竹ちゃん、またね。またね久ちゃん。
「またね」という言葉がこんなに沁みるとは。。。
弟を叩く兄、その兄の頭をはたいて叱る母、普段は冗談を言ってばかりだけど、ここぞという時に現れてはさりげなくサポートして包み込んでくれる父。
これぞ昭和ノスタルジー。
ストーリーはこうなってこうなると容易に想像できるが、後半、竹ちゃんの母の葬儀に訪れた久ちゃんの顔を竹ちゃんが見たシーンで涙腺が緩んだ後、貯金箱に貯めてたお小遣いでありったけのサバカンを買って竹ちゃんに渡すシーン、いつも竹ちゃんにミカンを盗まれては叱っていたミカン農家のおじちゃんが袋いっぱいのミカンを売り物にならないボロだと言って竹ちゃんに渡すシーン、列車で遠ざかる竹ちゃんと見送る久ちゃんの「またね」の応酬、列車の中で食べたミカンが最高に甘いし、迎えに来た父が「家に帰って母ちゃんの前で赤ちゃんみたいに泣くんじゃないぞ」と言いながら抱きしめるシーンに家の前で帰りを待っててくれて無言で抱きしめてくれる母、そしてエンドロール後に明かされる竹ちゃんの絵、と涙腺閉じるヒマは全く無い。
古き良き時代、昭和という時代の大きさにすっぽり包み込まれて映画館を立ち去るとき、とてつもない懐かしさと幸せに包まれる。
こんなに後味の良い映画ってなかなかないと思う。
がしかし、一つ落とし穴があるとすれば、パンフレットが映画館で買えないこと。
ストーリーも、役者さんの演技も、音楽も、そして風景もとても素敵でパンフレットを買って帰ろう!と思ったら映画館では販売してないって。。。
何度も繰り返して観たい映画ではないけど、映画館で観た後はDVDを購入して、夏の終わりにふと観返したくなる映画だと思う。
ボロは着てても心は錦。
「またね」が深い。
映画を観終わった後のおやつはカップケーキ、夜は河島英五さんの曲を聴きながら行く夏を惜しみたい。
映画館で観る際は大きめハンカチ忘れずに。